「高さ&強さが非力」「終盤に劣勢」。日本代表はW杯の敗北を糧にできたのか

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

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ワールドカップ・敗北の糧(最終回)
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 連載の最終回であらためて強調したいのは、日本代表がワールドカップでの敗北を糧に強くなってきたことだ。

 1998年フランスW杯では歯牙にもかけられない存在だったが、2002年日韓W杯ではJリーグ誕生で感化された世代を結集させ、決勝トーナメント進出を実現した。2006年ドイツW杯では慢心を打ち砕かれるも、2010年南アフリカW杯ではなりふり構わない"負けない戦い"で結果を示している。2014年ブラジルW杯は「自分たちらしさ」と心中したが、2018年ロシアW杯は海外で研鑽を積んだ選手が力強さを見せた。

 一進一退を続けるなかで、修正・改善を繰り返している。たとえば2006年W杯と2014年W杯は既視感も覚えるが、決して同じではない。2010年W杯と2018年W杯のベスト16は、ベスト16という数字では同じでも、内容は雲泥の差だ。そして下馬評が低い時、一致団結して「反骨」を見せられるのは、総じて長所と言えるのかもしれない。

日本代表のセンターバックとしてコンビを組む吉田麻也と冨安健洋日本代表のセンターバックとしてコンビを組む吉田麻也と冨安健洋 しかし一方で、端的な弱点も浮かび上がる。

<高さ・強さが非力。試合終盤に劣勢が出る>

 日本人は体格的に欧米人に比べて大きいわけではない。高さに関しては、ほとんど本質的な弱さと言っていい。

 ドイツW杯のオーストラリア戦、ティム・ケーヒル、ジョン・アロイージ、ジョシュア・ケネディを試合終盤に投入された時の狼狽は悲しくなるほどだった。その12年後、ロシアW杯のベルギー戦も、マルアン・フェライニが後半途中に投入されただけで、混乱は極みに達した。日韓W杯のトルコ戦も、ブラジルW杯のコートジボワール戦も、高さは直接的な敗因となっている。

 日本はその弱点克服のために、ポゼッションを追求してきたとも言える。

 自分たちがボールを持って主導権を握ることで、相手のペースにさせない。それは最も論理的な志向だった。日本人選手は基本的に俊敏で、ボールプレーにも優位性を持っていた。

 ただし、ボールを回し、運ぶためには高い精度が必要になる。それは最も脆弱な面を晒すことでもあり、リスクが高く、相手に奪われた場合はひっくり返される。その球際の強さの部分で、日本はしばしば後手に回った。そしてプレー強度の差がわかりやすく出るのが、体力的に消耗する終盤だったのだ。

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