世界王者とドロー。高倉新監督が取り戻す「なでしこの神髄」 (2ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 ロンドンオリンピック決勝。試合終了間際、岩渕の放った渾身のシュートをソロに阻まれた、まさにその相手だ。岩渕は今でもこの話になると表情が変わる。その悔恨は消えることはないだろうが、鬱憤を晴らすにはこのゴールは十分だったはずだ。そして間違いなく、この先制弾はなでしこたちの心の奥底に押しやられていた"神髄"を呼び覚ました。

 8分後には、右サイドから中島依美(INAC神戸)のクロスに大儀見(永里)優季(フランクフルト)が合わせて追加点。27分には、日本の右サイドを破られてアレックス・モーガンに1点返されたものの、上々の前半だった。日本の布陣は4-2-3-1。もともと選手たちが好む形であったが、高倉監督らしさが出たのはその並びだ。

 左サイドハーフに大儀見、1トップに岩渕を、そして3枚の真ん中には「使うことは決めていた」(高倉監督)というなでしこリーグ2部のASハリマから初招集された千葉園子を大抜擢した。この千葉が指揮官の期待に応えた。ボールを持てば一気に囲まれる。その中で物怖じしない堂々たるプレーをやってのけた。冷静な判断でボールを落とすこともできるし、前線のスペースを作ることもできる。もちろん自らのゴールへの軌道も常に描いている。厳しいチェックにもボールに食らいつくその闘争心は初招集とは思えないほど。

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