W杯予選ドロー発進。ハリル監督が見逃している日本の2つの問題点

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki photo by Fujita Masato

6月特集 ブラジルW杯から1年 ~日本代表と世界はどう変わったのか?~(5)

 少ないタッチ数で、ボールを保持する時間をできるだけ短く。ハリルホジッチ監督はこれまで、選手に縦へのスピードを求めてきた。

 確かに日本のサッカーはこれまで、縦への推進力に乏しかった。パスは回るが、進みが遅い。ブラジルW杯の3試合でも顕著だった点だが、そこにハリルホジッチは目を付けた。何より先に手を加えようとした。

シンガポール戦後、憮然とした表情のハリルホジッチ監督シンガポール戦後、憮然とした表情のハリルホジッチ監督 6月11日のイラク戦では、その効果が現れたかのように見えた。縦に速いパスワークから何本かチャンスを作り、それが実際ゴールにも結びついた。メディアはそれを称賛。ハリルホジッチを持ち上げたわけだが、日本サッカーの悪い習慣はそれだけに留まらない。イラク戦でもそれは全く解消されていなかった。だが、そこは不問に付された。ハリルホジッチも口にしなかった。

 見過ごされている問題点とは何か。外の使い方が下手。逆サイドがないサッカー。イラク戦後にも触れたことだが、少なくとも僕はこちらの方が、正すべき日本サッカーの重大な問題点だと思っている。シンガポールに引き分けた今、その思いはますます絶対的なものになっている。

 前半、日本はイラク戦同様、少ないタッチ数でボールを前に運ぼうとした。だが、シンガポールは最初から守り切るつもりでいる。イラクより総合的なレベルは格段に落ちるが、その点だけは徹底されていた。守備陣が凡ミスを犯し、日本に得点機をプレゼントしたイラクとは違っていた。

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