豊田陽平は代表「落選」という事実をどう受け止めたのか (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by AFLO

<一歩一歩こつこつやっていれば、運命は結果的に変わっていくもの。そう信じていたけど、今回は十分でなかった。それだけのことだ。自分のサッカー人生が終わったわけではない>

 その割り切りがあったから、落選という重い事実を受け止められた。これも人生なんだ、と悟ることができた。

 一方、会見場に待機していた尹監督は、あまりの口惜しさから立ち去ったという。そして広報を通じ、豊田に連絡を取った。そして、「自分も同じような思いをしたことはあるから、気持ちは分かる」と慰めた。

「リーグタイトルを取りましょう!」

 それに対し、豊田はきっぱりと言った。彼の心は周囲が思っている以上に、前を向いていた。

 もっとも、それは執着がないのとはまるで違う。
 
 彼はゴールを取ることを生業(なりわい)にしてから、ゴールを取れないときに切り替えられる術を身につけた。失敗に心を奪われると、次のゴールチャンスでもしくじるからだ。それは自然と、彼の人生観にもなっていた。

<浮き沈みなくやっていくことが大事なんだ>
 
 彼はそう心得る。幼い頃の彼は、負けた試合後は手が付けられなかった。両親が迎えに来てもふて寝した。それに比べれば大人になったとも言えるが、感情をコントロールできるようになったことは後退ではない。だから落選の報を受けた後も、一度も涙を流していなかった。

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