「グアルディオラのバルサのよう」。INAC神戸がスペイン女子サッカー界に与えたインパクト (2ページ目)

  • 山本美智子●取材・文 text by Yamamoto MIchiko
  • photo by Hayakusa Noriko

「世界一っていうか、バロンドールをとった選手と同じグラウンドに一緒に立てるなんて、このうえない光栄。またとない貴重なチャンスだった」と興奮冷めやらぬ様子で喜びを隠さなかった。

 バルセロナレディースを率いるチャビエル・ジョレンツ監督は「澤が触るボール触るボールのひとつずつ、ピッチで彼女が触れるものは全て10点満点」とべたぼめ。この日の試合で澤の調子は今ひとつ良くないように見受けられたが、ジョレンツ監督は「彼女のボールタッチはぶれない」とその安定感を高く評価した。

 他にも気に入った選手として、川澄奈穂美、大野忍、田中明日菜らの名前を次々にあげた。特に「川澄はすごく気に入った。スピードがあり、アグレッシブで、積極的に攻撃を仕掛ける」と絶賛。また「スピードがあって川澄といいコンビネーションプレイ」ができる大野のほか、キーパーの海堀あゆみや、バルセロナレディースの攻撃から何度となくチームを救ったセンターバックの田中など、守備の選手の名前もあげた。

 さらには、「ボールタッチがうまく、細かいパスを回していくINACは、まるでトップチームのバルサ、特にグアルディオラのバルサを見ているかのような瞬間もあった」とこれ以上ない最高級の賛辞まで飛び出した。また、「INAC神戸の強さは、澤だけじゃなく、ほかにもたくさんの優秀な選手がいること。大野や川澄の連携など、コンビネーションはINACの持ち味。個よりもチームプレイを大事にしているところもバルサ的だ」とバルサのようなプレイを目指すINAC神戸にとって嬉しい言葉を送った。

 ロンドン五輪についても、ジョレンツ監督は「優勝できるかどうかはわからないが、(日本代表が)優勝候補なのは間違いない。アメリカやブラジルなどと肩を並べて、金メダルを競り合うことになるだろう」と、なでしこジャパンに太鼓判を押した。

 今回、INAC神戸が対戦したバルセロナレディースは、今季のリーグ戦、一度引き分けたのみで残りは全勝、つまりは無敗を続けており、もちろんリーグ首位。昨年から年間予算を大幅に削られたバルサのリストラ部門であるにもかかわらず、現在、クラブ史上最高の成績を誇っている。

 そのバルセロナが、なでしこジャパンのメンバーを7名抱えるINAC神戸と試合し、ドローで試合を終えたのだ。おそらく、スペイン国内で見ることのできる女子サッカーの試合で、ここまでレベルが高い試合は、観客にとって生まれて初めてだったのではないだろうか。

 女子サッカーを専門にやる記者がいない女子サッカー不毛の地・スペインだが、この試合の観戦に、バルセロナのサンドロ・ロセイ会長がスタジアムへ足を運び、大きな話題を呼んだ。それほど、今回の親善試合は注目を浴びていたといえる。

 INAC神戸のバルセロナ遠征は、スペインにおける女子サッカーの普及に一石を投じたのかもしれない。

2 / 2

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る