「グアルディオラのバルサのよう」。INAC神戸がスペイン女子サッカー界に与えたインパクト

  • 山本美智子●取材・文 text by Yamamoto MIchiko
  • photo by Hayakusa Noriko

試合後、記念撮影をするバルセロナレディースとINAC神戸の選手たち試合後、記念撮影をするバルセロナレディースとINAC神戸の選手たち
「パパ、見て、あのボールタッチ!」

 INAC神戸レオネッサがバルセロナレディースと対戦した翌日、スペインの地元紙にそんな見出しが躍った。

 日本とは比較にならないほど、女子サッカーがマイナーなスペインにおいて、それも公式試合でない、親善試合の結果が翌日の新聞に大きく報じられるのは、非常に稀(まれ)なことだ。

 この見出しが語っている事柄はふたつある。ひとつは、純粋な賞賛。スタジアムで行なわれた試合を生で観戦しながら、INAC神戸の選手たちの技術の高さに純粋に感嘆の声をあげた少女の声そのものだ。

 もうひとつは「思ったよりずっとうまかった」という驚きだ。サッカーの歴史があるスペインでさえ、女子サッカーはマイナーで有名選手も出てこないのに、男子サッカーはスペイン代表ほどではなく、たいしたレベルにない日本の女子チームが、「こんなに上手にプレイできるものなの?」という驚愕がこのひと言に集約されているのだ。

 FIFAバロンドールの女性部門を獲得した澤穂希がいるくらいなのだから、レベルが高くて当然ではないか、と考える者も少しはいたかもしれない。しかし、スペインでは、澤がメッシと同じ舞台でバロンドールをとった授賞式は、生中継こそされたものの、その注目度には雲泥の差があった。

 バロンドールを受賞した澤と女子の最優秀監督として選ばれた佐々木則夫監督のスピーチだけは、スペインのテレビでは訳されることすらなかった。日本人が選ばれることを想定していなかったのかどうかは定かでないが、スペインのテレビ局は、他の言語はともかく日本語の同時通訳者の用意もしておらず、日本からみれば歴史的快挙となったこの舞台でのスピーチは、スペイン人には全く伝わらないまま終わったのである。

「この国には女子サッカーを専門にやる記者はいない」と地元のスポーツ記者が断言するように、女子サッカーがいかにスペインでは軽視されているのかが、わかるだろう。

 その一方で、スペインで女子サッカーに従事している人々は、INAC神戸や澤のすごさを身にしみて感じていた。

 正直、まだプレシーズンがスタートしてまもないINAC神戸とシーズン真っ最中のバルセロナレディースの対戦なので、今回の試合を通して両者を比較することは不可能だろうが、そういった点を差しひいても、「やっぱりうまかった」と話したのは、バルセロナレディースに同点弾をもたらしたFWのオルガだ。

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