阿部慎之助監督が自らスイングして「お手本」に 矢野謙次コーチが語る新生・巨人「巻き返し」の指導体制 (3ページ目)

  • 寺崎江月●取材・文 text by Terasaki Egetsu

――矢野コーチは2018年に引退後、日本ハムでコーチやスカウトなどを経験しましたが、その経験は生かされていますか?

「もちろん生かされています。引退後、特命コーチとしてテキサス・レンジャーズにも派遣していただきましたし、その後は一軍、二軍でもコーチを務めさせていただきました。

 そのなかで選手とのコミュニケーションの取り方を学ぶことができ、昨年はスカウトも経験させてもらって、スカウトのみなさんがどんな視点で、どんな思い入れがあって選手を獲得しているのかを知ることができました。その大変さを身に染みて感じ、『スカウトの方たちのためにも、預かった選手を成長させなくてはいけない』という使命感が強くなりましたね」

――ちなみに日本ハムの現役時代には、大谷翔平選手とも一緒にプレーされていましたね。当時はどんな印象でしたか?

「それはもう、半端じゃなかったです(笑)。あの大きな体を上手にコントロールできますし、柔らかさ、パワー、野球に対する考え方や取り組む姿勢といったところまで驚きの連続でした。あれだけ野球にすべてを注いでいる選手を見られたことも、いい経験です」

――そこで見た大谷選手のメソッドなどを、コーチとして選手に伝えることもありますか?

「聞かれたら答えることはありますが、どの選手も大谷選手ではないですから。その選手が自分の特徴に合わせた練習法を考え、実践していけば問題ないと思います。私もそれぞれのよさを把握し、成長へのアプローチを提案することを意識しています」

――最後に、矢野コーチが思い描く今季の目標を聞かせてください。

「チームとして目指すのは、もちろん日本一になって、阿部監督を胴上げすることです。そして、会心の『最高でーす!』が聞きたいですね。個人としては、"常に学ぶ"こと。選手と一緒にになって学びながら、チームを向上させていけたらと思っています。

 長いシーズンのなかで調子を落とす選手や、チームがなかなか勝てないということもあるでしょう。その原因をしっかり分析し、改善できるように取り組んでいきたいです。その改善策がうまくいかなくても、さらなる改善策を考えていけば成長につながる。そういったことを繰り返していきたいですね」

【プロフィール】
◆矢野謙次(やの・けんじ)

1980年9月21日、東京都生まれ。国学院久我山高から国学院大に進み、2002年ドラフト6巡目で巨人に入団。勝負強い打撃で活躍し、2013年には球団新となるシーズン代打安打19本をマークした。2015年6月にトレードで日本ハムに移籍し、2018年限りで現役引退。引退後は日本ハムの特命コーチとしてテキサス・レンジャーズにコーチ留学。その後は日本ハムの一軍や二軍のコーチ、スカウトを経験。昨年10月に巨人の一軍打撃コーチに就任することが発表された。

プロフィール

  • 寺崎江月

    寺崎江月 (てらさき・えげつ)

    丙午(ひのえうま/1966年)生まれ。TBSの派遣AD、企業の営業を経て、2008年の『西岡剛7』(三修社)からNPB専門の野球ジャーナリストとして活動をスタート。『PL学園OBはなぜプロ野球で成功するのか?』(ぴあ)、2012年に巨人・長野久義から始まった廣済堂出版のメッセージBOOKシリーズ全18作品の企画プロデュースを担当。そのほか、現中日ドラゴンズ立浪和義監督『攻撃的守備の極意』など"極意シリーズ"、『アライバの鉄則』といった名選手たちのマスターズメゾットも担当する。

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