オリックス・山下舜平大から初勝利 西武打線は「日本で1、2を争うピッチャー」にどう挑んだのか (4ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke

【やっぱりカーブはすごい】

 以上の伏線や個々の技能が先制点につながり、リズムを崩した山下は2回以降も立て直すことができなかった。ヒットはわずか2本に抑えた一方、ストライクゾーンへ思うように投げられずに与四死球8。試合序盤からフォークはたたきつけることが多く、使えなくなってストレートとカーブの2球種で組み立てた。

 結果、ひとり相撲となって西武戦で初黒星。昨季の開幕戦や以降のシーズンで残した鮮烈な内容とはほど遠かったが、それでも5回2失点、被安打2に西武打線を抑えたのは、あらためて高いポテンシャルを示したとも言える。

 実際、西武の打者もそうした印象を話した。5回、先頭打者でチーム2本目のヒットをレフト前に放ったのが9番・源田壮亮だ。外角への154キロのストレートが2球続いて追い込まれたあと、3球目は153キロのストレートが真ん中低めに来たところを対応した。

「やっぱりカーブはすごい。フォークもすごく落ちますし。追い込まれていたので変化球を頭に入れながら、真っすぐに遅れて勝手にあっち(レフト)にいった感じです」

 一方、山下に対して2打数無安打1四球に終わった外崎はこう振り返った。

「今日は調子が悪そうだなという感じでした。フォークを叩きつけていたし。でも真っすぐとカーブは、いい球種を持っているなと。あれだけ悪くても、(6回途中で)三振を5個もとれるのはいいピッチャー。(コースや高さが)いいところでバットに当てさせない投球をできるのは、ピッチャーとして強いなというイメージは感じましたね。2打席目のライトフライはしょうがない。インハイ、山下舜平大の強いボールにもしっかり(バットを出すタイミングが)間に合ったと、いいほうにとらえています」

 山下の今季初登板は期待に反する投球内容となったが、その裏には昨季完璧にやられた西武の対策もあった。外崎がフライアウトを「いいほうにとらえている」と言ったほど、山下はリーグ最上級の投手とインプットされている。

 同時に、投げるたびにデータも集まっているのは事実だ。今後も相手が高い警戒心で臨んでくるのは間違いない。

 対して、山下はどう向かっていくのだろうか。まだ始まったばかりの2024年シーズン。次こそ、本領発揮の山下と相手打線の真っ向勝負を楽しみにしたい。

プロフィール

  • 中島大輔

    中島大輔 (なかじま・だいすけ)

    2005年から英国で4年間、当時セルティックの中村俊輔を密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『山本由伸 常識を変える投球術』。『中南米野球はなぜ強いのか』で第28回ミズノスポーツライター賞の優秀賞。内海哲也『プライド 史上4人目、連続最多勝左腕のマウンド人生』では構成を担当。

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