斎藤佑樹は623日ぶり勝利に「うれしいです......いや、うれしくはないですけど、すいませんでした」 (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta

 あの札幌でのベイスターズ戦のことはよく覚えています。とにかくゴロが多かったイメージがあります(奪った15のアウトのうち、8つがゴロアウト)。ツーシームの感覚がすごくよくて......ここから先の僕はこういう打ち取り方が自分のスタイルになるんだなと腹を括った試合でした。

 その時までは三振を取りたいとか、もっとスピードを上げたいとか、そういう葛藤がありました。でも、あの勝利によってフォーシームはツーシームをつくるための基準になればいいんだというピッチングに自信を持つことができたんです。ゴロアウトを増やして、球数を少なくして、テンポよく味方が守りやすいように、攻撃に移ったらいいリズムで打てるような、そんなピッチングをすればいい......ワンバウンドになる縦のスライダーや速いフォーシームはもういらないんだと思えました。ちょっと時間がかかりすぎでしたけどね(笑)。

 ベイスターズの4番は筒香(嘉智)でした。第1打席は低めにツーシームとカットボールを集めてセカンドゴロ、第2打席は初球、2球目とフォーシームをインサイドへ見せてから、ツーシームでセンターフライに打ち取りました。あらためて、新しいスタイルを築くうえですごく自信になりましたね。

【自分自身が丸くなり始めた】

 4月のマリーンズとの負けた試合もそうでしたが、真ん中から右下、左下、真下にボールをスッと動かしていく......コーナーいっぱいに投げなくても、真ん中から両サイドに逃げていけばいいんです。勝ち投手になったのは久しぶりで(623日ぶり)、札幌ドームのお立ち台に立ったのも本当に久しぶりでした(975日ぶり)。

 お立ち台で僕、何と言ってましたか? 覚えてないなぁ(観客の大声援について訊かれて「うれしいです......いや、うれしくはないですけど、ちょっと長かったなという感じで、すいませんでした」と答えた)。

 そうか、そんなことを言ってたんだ......たぶん、そのあたりから自分自身が丸くなり始めたなという感覚ですね(笑)。

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