斎藤佑樹は623日ぶり勝利に「うれしいです......いや、うれしくはないですけど、すいませんでした」

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta

連載「斎藤佑樹、野球の旅〜ハンカチ王子の告白」第51回

 早実の斎藤佑樹が甲子園で輝いていた時、彼の背中には背番号1があった。ファイターズでプロのエースナンバー、18番をつけていた斎藤は、2017年から思い入れの深い背番号1をつけることになる。心機一転、斎藤のプロ7年目が始まった。

2017年5月31日のDeNA戦で623日ぶりの勝利を挙げた斎藤佑樹 photo by Sankei Visual2017年5月31日のDeNA戦で623日ぶりの勝利を挙げた斎藤佑樹 photo by Sankei Visualこの記事に関連する写真を見る

【新スタイルの投球に自信】

 あの頃の僕は、マウンドに上がっても常にギリギリのところで戦っていました。状態がいい時には一軍のバッターが相手でも勝負できましたが、よくない時には二軍のバッターであっても勝負にならなかった。いいピッチャーというのは調子の波が少ないのに僕はその差がすごく激しくて、いい調子をうまく保つことができませんでした。その理由が何だったのか、正直、今でもよくわかりません。それがもどかしくて、いつもいい時の感覚を追い求めていたような気がします。

 プロ7年目は開幕ローテ−ションの枠に滑り込みました。でも最初の先発で勝つことができず(4月6日のマリーンズ戦、5回まで2点に抑えながら味方が1点に抑えられて、6回、先頭バッターを歩かせたところで交代、負け投手)、すぐに二軍行きとなります。それでも、その日のピッチングには手応えを感じていました。フォーシームを見せ球にしながらツーシームとカットボールで芯を外すピッチングがようやくうまくいくようになっていたからです。

 それでも、結果が伴わなければ2度目のチャンスはありません。そもそもローテーションの順番が最後のほうでしたから(開幕からは7人が先発、斎藤は6番目)、数少ないチャンスに僕のほうが合わせなければならなかったのに、それができなかった。

 4月末の二軍戦では悪い時の自分が出て、メッタ打ちを喰らってしまい(4月26日のイーグルス戦で初回7失点)、一軍での2度目のチャンスをもらうまでに時間がかかってしまいます。5月には二軍の試合で結果を積み重ねて(イースタンでの2試合、10イニングを無失点)、次に一軍で先発したのが5月31日の交流戦でした。

1 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る