「台湾の打撃王」が巨人・岡本和真との再会に興奮 かつて甲子園を目指した梁家榮の次なる夢 (3ページ目)

  • 阿佐智●文 text by Asa Satoshi

 だが、順風満帆とはいかなかった。1年目は1試合だけ一軍で出場し、3打数2安打と素質の片鱗を見せたものの、その後が続かなかった。二軍では早々に首位打者を獲得したが、一軍ではなかなか結果を残せなかった。

 選手層が決して厚くない台湾では、一軍、二軍のレベルの差だけでなく、同じ一軍でもレギュラーと控えの差は大きい。それに加えて、観客のほとんどいない二軍とは違い、一軍は大音響の熱烈な応援が繰り広げられ、梁は力みからパフォーマンスを発揮できなかった。

「台湾では、試合の時のヤジとかはないんです。その代わり、SNSがすごいんです。ミスをすると、スマートフォンがすごいことになります。ちょっとひどいですね(笑)」

 一軍の注目度の高さは、梁にとって大きなプレッシャーとなった。

 そんな梁が一躍注目を集めたのが、2015年のアジアウインターリーグだった。台湾で開催され、日本、韓国などのプロリーグの選手を集めて行なわれる教育リーグで、当時ルーキーだった岡本和真(巨人)も参加していた。そこで梁は打率.476を記録し、首位打者に輝いた。

 そして昨年、正真正銘の首位打者に輝いた梁だが、その一方で岡本は巨人という枠を超え、世界一に輝いた侍ジャパンの主力打者へと成長していた。

【かつては森友哉や高橋光成と対戦】

 試合当日、巨人より先にドームに入り、練習を終えていた楽天モンキーズナインのなかでも、梁はとりわけ興奮を隠せずにいた。憧れの巨人の選手たちがフィールドに入ってくると、梁の目は少年のように輝いていた。

 打撃練習が始まると、少年時代の憧れだった二岡コーチがバッティングゲージの裏に姿を見せたが、「ちょっと無理っすね」とあいさつに行きたくても足が動かない。台湾メディアの共同記者会見に臨んだあと、一旦ダグアウトに退いた。

 その数分後、ウォーミングアップを終えた岡本がバッティング練習のため姿を現した。チームスタッフからそのことを聞いた梁は、慌ててフィールドに飛び出し、岡本の姿を探した。そしてチームメイトの打撃練習を眺める岡本に声をかけ、あいさつを交わした。積もる話があったのか、自分の番が来たためゲージに入った岡本の打撃練習を眺め、それが終わると再度話に花を咲かせていた。

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