侍ジャパン メジャー組ではない4人のWBCアナザーストーリー 世界一へと導いたそれぞれのプロフェッショナル【WBC2023】 (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Sankei Visual

 そしてあの打球判断──周東は以前、こうも話していた。

「打球判断をする時は、ボールだけを見ないようにして、打球が飛んだ方向を見ています。とくにセンターから左へ飛んだ打球は走っていく方向の先になりますから、ボールを追う野手の動きも同時に見るようにしています」

 村上の打球がセンター方向へ飛んだ瞬間、周東は「越えると思ったので勝ったと思いました」と言った。そしてあまりにスタートがよかったせいで前を走る大谷に追いつかんばかりの周東は、大谷の同点のホームインのわずか1秒後、サヨナラのホームに滑り込んだ。そのときに考えていたことを訊くと、周東はこう言った。

「3塁を回ってから直線的に入れるように......で、転ばないように、それだけです(笑)」

【骨折しながら強行出場した守備の要】

 もうひとりは、ショートを守る源田壮亮の守備だ。

 準決勝の2回、先発の佐々木朗希がレフト前、ピッチャーへの強襲ヒットと連打を許したワンアウト一、二塁の場面で、源田が6−4−3のダブルプレーを完成させてピンチを凌いだ。

 7回には、2番手の山本由伸が歩かせたランナーが試みた盗塁をキャッチャーの甲斐拓也が防ぐ。その際、源田は身体をひねってうまく掻い潜ろうとしたランナーの動きを読み切ってグラブを運び、かろうじてタッチ。三振ゲッツーでこの回をゼロに抑えて試合を落ち着かせた。一度はセーフと判定されながらリプレー検証でアウトとなったこのプレーが、直後の吉田正尚の同点3ランを呼び込んだと言っても過言ではない。

 さらに1点差に追い上げ、どうしてもゼロで抑えたかった9回。ショートの後方、レフトの前へ上がったフライを、源田が背走しながらスーパーキャッチ。ここでも波風を防いで、9回裏の逆転サヨナラ劇へとつないでみせた。

 いや、そもそも源田は右手の小指を骨折していたはずだ。3月10日、1次ラウンドの韓国戦でけん制の際の帰塁で指を突いてからまだ2週間も経っていない。それでも平然と試合に出て、ショートを守り、安心感のあるプレーで試合を落ち着かせる。まさに栗山英樹監督の言葉どおりだ。

「今の日本にとって、しっかり守る形をつくることは欠かせない。そのために源ちゃんは絶対に必要な存在なんだ」

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