斎藤佑樹が「このまま野球ができなくなったらどうしよう」と不安だった日々 785日ぶりの勝利に「第二の野球人生が始まる」 (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta

 ストライク先行で(打者18人に対してボールが2球先行したのは1人だけ、あとは2球目までにストライクをとっていた)、変化球に頼ることなく、ストレートで勝負できていました。ワンバウンドは何球か(7球)ありましたが、バットを振らせることもできていましたし、何よりもフォアボールがなかったことで、ストライクをポンポン投げることをバッターが嫌がる感じが出せていたと思います。

 それまではピンチになると変化球かツーシームに頼りたくなっていたのが、真っすぐでいきたいと思える自分になっていました。変化球を投げすぎて自滅することが多かったのは、真っすぐでいける状態なのに真っすぐでいかなかったのが自分の首を締める原因だったことにやっと気づいたんです。二軍でも一軍でもやるべきことは変えられない。だったら、一軍で勝てなかったらどうしようという気持ちになるのではなく、一軍でも二軍でも同じことをしようと肝に銘じることができました。

【プレートの踏む位置を使い分け】

 その1週間後(7月12日)、僕は一軍に上がって先発することになりました。相手はホークスで、札幌ドームは超満員です。二軍での3カ月でつくり上げてきたスタイルは、ストレートを軸にストライクゾーンで勝負すること。しかも、そのストレートをインコースへ投げ込みたいというテーマを持ってマウンドへ上がりました。

 そのために、1番の中村晃選手が左バッターボックスへ入った時、いつもは三塁側を踏んでいたプレートの真ん中を踏んで投げました。右バッターに対してはこれまでどおり、プレートの三塁側を踏んで、左バッターの時は真ん中を踏む......二軍の試合でも試してきたことではありましたが、左の長谷川(勇也)選手、柳田(悠岐)選手にもプレートの真ん中を踏んでインコースを攻めました。柳田選手の時は初球、インハイのスライダーを投げてファウル、膝元のボールゾーンに真っすぐを1球見せてからインハイへストレートを投げたら、ファーストフライに打ちとることができました。

 プレートを踏む位置を変えてみようと思ったのは、ふとしたきっかけからでした。室蘭で投げた直後、利府(宮城)でのイーグルス(二軍)戦(6月15日)で投げた時、そうせざるを得なくなってしまったんです。

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