阪神・岡田彰布監督と吉田義男監督の共通点を掛布雅之が語る「守り重視」と「起用法」 (2ページ目)

  • 浜田哲男●取材・文 text by Hamada Tetsuo

【吉田監督と岡田監督の共通点】

――抑えれば嫌なイメージをすぐに払拭できますし、リリーフのピッチャーには名誉挽回のチャンスをすぐに与えていたのですね。

掛布 自分で決着をつけさせるわけです。そういう部分は、今の岡田監督と似ているところがありますね。岡田監督の昨シーズンの野球もそうですし、1回目に監督をしていた時(2005年~2008年)もそうですが、守りを重視しているところなど、吉田監督と共通している部分が多々あると思います。

――岡田監督とは、継投のタイミングなども共通する部分はありましたか?

掛布 ありますね。吉田監督がピッチャーを交代するタイミングはとてつもなく慎重ですが、その反面、大胆さもありました。ただ、間違うことはなかったような気がします。福間納さんというオールマイティーなカードがあったのも大きかったなと。

 福間さんは1985年、58試合に登板しているのですが、中継ぎをメインとしながら先発登板もあり(同年は4試合に先発)、イニングまたぎもしていました。影のMVPは福間さんだと僕は思っていましたよ。試合の中盤でリズムを作り、山本和行さん、中西清起のダブルストッパーにつないでいましたから。

――クローザーがふたりいたことも大きかったですね。

掛布 中西はプロ2年目で、あのバックスクリーン3連発を打った試合(※1)で初めてセーブを挙げたのですが、福間さんが二者連続で本塁打を打たれて1点差に迫られた後、中西を登板させたんですよ。二者連続で三振を奪うなど見事に三者凡退におさえたのですが、思い切った継投だったなと。

 このようなピッチャーの起用法は、昨年の日本シリーズで岡田監督が湯浅京己を登板させた時の起用法(※2)とちょっと似ているところがありますね。大胆であり、計算された繊細さも持ち合わせている感じでしょうか。

(※1)1985年4月17日の甲子園での阪神vs巨人戦で、巨人の先発・槙原寛己氏からバース氏、掛布氏、岡田氏が三者連続でバックッスクリーン付近に本塁打を放った。

(※2)2023年11月1日に行なわれた阪神vsオリックスの日本シリーズ第4戦。3-3で迎えた8回表二死一、三塁の場面で湯浅を起用。一軍での登板は6月15日のオリックス戦以来だったが、中川圭太を1球で打ち取り、ピンチを脱した。

――ちなみに、1985年はポジションと打順がほとんど固定されていましたが、その点も今の阪神と共通していますね。

掛布 当時は2番・センターと8番・キャッチャー以外は、ほとんど代えられることがありませんでしたね。それと、僕はスリーボールから「待て」のサインが出たことがありません。もっと言えば、すべての打席でサインが出たことがありません。

 吉田監督は、「スリーツーから打つストライクも、スリーボールから打つストライクも一緒だ」と言うんです。なので、スリーボールになった時に投げてくるだろう一番甘い真っすぐを打って構わないと。「待て」とか「打て」とかサインを出さなくても、4番として状況判断をしてくれるだろうと、信頼してくれていることを感じましたね。

 後ろを打つオカ(岡田氏の愛称)の状態がよければ、無理に打たずに出塁を考える時もありましたし、そうでなければ長打を狙いにいくことも。前を打つランディ(・バース)を含め、前後のバッターの状態を考えながら、打席の中でいろいろと仕掛けることを意識していました。

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