守護神剥奪、サイドスロー転向...現役ドラフトでオリックスへ移籍の鈴木博志が語る紆余曲折の6年と新天地にかける思い (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

 身長182センチ、体重95キロと縦にも横にも大きなマウンド姿。ゆったりと、雄大な投球フォームから放たれた剛球は、捕手のミットを激しく叩く。最速157キロという数字以上の破壊力が滲むボールは、1球見ただけで「モノが違う」と思わせた。

 1年目は53試合に登板し、4勝6敗4セーブ12ホールド。終盤戦に息切れして防御率こそ4.41に留まったものの、上々のデビューだった。鈴木は「真っすぐに関してはいけると思っていました。自信はずっとありましたよ」と振り返る。

 翌2019年は開幕から守護神を任され、14セーブを挙げている。だが、不安定な投球内容から早々に守護神の座を剥奪。それ以降、鈴木は出口の見えないトンネルをさまよい続けるのだった。

 プロ2年目の鈴木には、あるルーティンがあった。MLB通算417セーブを記録するクレイグ・キンブレル(現・オリオールズ)がセットポジションに入る前にとる、上体を深く前に倒して右腕を横側へと垂らす「威嚇ポーズ」だ。

 当時、球界では鈴木のルーティンに対して、批判の声も大きかった。「他人のマネをするのは、自分に自信がない裏返し」と指摘する解説者もいた。

 だが、鈴木の考えは違った。

「正直言って、普通なら恥ずかしいですからやらないと思うんです。でも、自分は思いきってああいうことをやることで、どこか振りきれる感覚がありました。キンブレルは好きな選手でもありましたしね」

 リリーフ失敗が重なったある日、鈴木は首脳陣から「リズムを変えるために、あれをやめてみたら?」と提案を受け、ポーズを封印している。だが、結果的に鈴木は「リズムがおかしくなった感覚がありました」と振り返る。

【サイドスロー転向の打診】

 そしてプロ3年目の2020年は大きな分岐点になった。鈴木は首をひねりながら、こう明かした。

「3年目になって、急にボールがいかなくなったんです。スピードが140キロ台中盤くらいしか出なくて、『おかしいな?』と思っても全然ボールが上がってこない。ケガもまったくしていないし、コントロールも余計に悪くなって......。とにかく体が動かない感覚がありました」

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