斎藤佑樹、ワンバウンド連発のプロ4年目の苦悩「けなされても喜べばよかった」と思う真意 (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta

 にもかかわらず変化球に頼りたくなってしまうのは、自分のボールに自信を持てていなかったからなんでしょうね。しかもストライクゾーンに投げるというよりコーナーギリギリを狙って、低く低く投げようとしてしまう。シンプルに、大胆に攻めることができず、ボールゾーンの変化球を振らせようという意識がピッチングを難しくしていました。

 もう右肩に痛みはなかったし、あの時点で目指すフォームができあがりつつあって、もしかしたらストレートの質が変わってきていたのかもしれません。ただ、今のようにデータで球質が数値化されているわけでもなく、ストレートに関しても自信を持てるところまではいっていませんでした。

【今のような詳細なデータがあれば...】

 今のような詳細なデータがチームに入るようになったのは、ここから5年後くらいのことだったと思います。今はデータを見ればいろんなことがわかるんです。たとえば、このカウントからのストレートはそんなに打たれていないとか、僕のスライダーはほかの人とは軌道が違うからこのコースならストライクゾーンに投げても打たれにくいはずだとか、客観的なデータが自信を与えてくれます。

 当時はそういう説得力のあるデータもなかったし、そもそも二軍にいると、当然ながら褒められることが少ないじゃないですか。だから自分でも結果が出なかった試合後、「今日のこのボールはよかったから、これを投げ続けて磨いていこう」とはならない。あくまでもイメージのなかで「今日の課題はこれだった」「次は悪かったこの部分を直そう」みたいなネガティブなところにばかり目が向く発想になります。

 それが、結果をデータで可視化できるとなれば、よかったところも見えてきます。それがわかれば、このまま続けていくべきところと直すべき課題がハッキリしてくるんです。でも、結果から逆算した感覚だけに頼って次を目指そうとすると、せっかくよかったところも消してしまいます。それではなかなか前へ進めません。

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