岩隈久志がメジャーで感じた「文化の違い」と少年野球の指導者として大切にしていること (3ページ目)

  • 白鳥純一●取材・文text by Shiratori Junichi

 巨人がセ・リーグ優勝を成し遂げ、日本シリーズに向けて調整を続けていた2020年の秋。岩隈は実戦復帰を目指してシート打撃に登板したが、その時に肩を脱臼。このケガをきっかけに、一軍での登板が叶わぬまま引退を決断することになった。

「ケガの影響でまったく投げられなかったことは本当に残念でしたが、自分で引退を決めることができましたし、悔いのない野球人生を過ごせたと思っています。もしかしたら、『巨人に何をしに行ったの?』と言われてしまうかもしれませんね。それでも華やかなセレモニーで送り出していただいた、ジャイアンツのみなさんには感謝しかありません」

【メジャー時代のチームメイトに学んだ「野球を楽しむ姿勢」】

 引退後のプランについては「特に考えていなかった」そうだが、「一度はグラウンドの外から野球を見たほうがいいんだろうと漠然と思っていた」という思いから、マリナーズの特任コーチに就任。プロの現場に関わりながら、少年野球チームの指導にあたっている。

 近年は、「子どもの野球離れ」が加速していると話題になることが多くなった。少子化の影響もあるだろうが、公益財団法人「笹川スポーツ財団」による調査によれば、2001年に約282万人だった10代の野球人口は、2021年には約137万人に半減したとされている。
 
 それを受け、岩隈は次のように熱意を語った。

「単純に若い世代の人口が減っている影響かもしれませんが、野球が楽しめなくなって途中でやめてしまう子もいるのかもしれない。細かい数字はわかりませんが、僕にできることは、野球の楽しさを子どもたちに伝えることしかないと思っています。野球が上手になればもっと楽しくなって、続けてもらえる可能性が高くなる。そういったことの積み重ねで、結果的に野球人口を増やすことができたらいいですね」

 続けて、これまでの指導で見えてきた「少年野球の課題」についてもこう指摘した。

「今は中学生の指導をしていますが、『これまで、ずっと怒られながら野球をやってきたのかな』と見えたり、必要以上に失敗を恐れている子が思った以上に多いと感じます。とても残念な気持ちになりました。日本では日々の練習や技術の上達が優先されがちですが、そんな中で、純粋な野球の楽しさを伝えていくことが僕の役目だと思っています」

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