奥川恭伸とのキャッチボールで急成長 指揮官も認めた逸材、ヤクルト2年目の坂本拓己から目が離せない (4ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya

「先発として9回を投げきりたい思いがありますし、フェニックスでは初めて5回を投げましたが、まだ投げる体力が足りていないと感じました。松山のキャンプではそこを課題にしましたが、ブルペンでは後半になるとストレートが弱くなってしまうというか......。オフは投げる体力づくり、しっかり筋肉をつけてキレのある体にしていきたいです。でも、そっちばかりに気を取られてもダメなので、投げるほうも行ないつつ、バランスのいい自主トレにしたいです」

 松山キャンプでは、髙津臣吾監督にジーッと観察されてのピッチングもあった。坂本のボールを見た髙津監督は、こう感想を述べた。

「びっくりするようなスピードではないですけど、特徴のある球を投げていましたね。変化球の曲がりも大きいですし、制球も1年目にしてはまとまっているほうだと思います。いま一軍がどうこうというのはないですけど、本当に楽しみな選手です」

 力強いストレートをアピールする坂本が、そのなかでもこだわっているのが平均球速だ。

「僕のなかでは回を重ねても球速が落ちずに、質のいい真っすぐを投げられるかが勝負だと思っています。球速以上に速く感じるようなスピンの効いた、140キロ中盤の質のいい球を常時投げたい。球速が出てもボールが弱かったりすれば打たれるでしょうし、球速が落ちていけば2巡目、3巡目につかまる可能性が出てきます。球速は気にしていかないといけないのですけど、今はそれよりも質を求めていって、その結果、MAXが出ればと思っています」

 2024年の目標について聞くと、控えめな答えが返ってきた。

「どんどんアピールして一軍で投げたいと思っているので、まずはケガをしないで投げること。そこに向けて、体づくりから頑張っていきたいです」

 吉村との自主トレが休みとなった1月17日、坂本は戸田球場で奥川と入念なキャッチボールなどで汗を流した。春季キャンプがまもなく始まる。坂本はどんなアピールを見せるのか。今から楽しみで仕方がない。

プロフィール

  • 島村誠也

    島村誠也 (しまむら・せいや)

    1967年生まれ。21歳の時に『週刊プレイボーイ』編集部のフリーライター見習いに。1991年に映画『フィールド・オブ・ドリームス』の舞台となった野球場を取材。原作者W・P・キンセラ氏(故人)の言葉「野球場のホームプレートに立ってファウルラインを永遠に延長していくと、世界のほとんどが入ってしまう。そんな神話的レベルの虚構の世界を見せてくれるのが野球なんだ」は宝物となった。以降、2000年代前半まで、メジャーのスプリングトレーニング、公式戦、オールスター、ワールドシリーズを現地取材。現在は『web Sportiva』でヤクルトを中心に取材を続けている。

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