奥川恭伸とのキャッチボールで急成長 指揮官も認めた逸材、ヤクルト2年目の坂本拓己から目が離せない (2ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya

 坂本はその頃について、「投げる体力が全然なくて、もっても1回か2回という状態でした」と話す。7月30日の巨人戦では、1イニング目は最速147キロを記録するも、2イニング目は138キロまで落ちた。

 体力が落ちてしまう理由のひとつに、「暑さが北海道と全然違いました」(坂本)ということもあった。山本コーチは「夏場は戸田の暑さにバテて、途中でリタイアもありました」と教えてくれた。

 坂本の生まれ育った奥尻島の平均気温は10.3度で、最も気温の高い8月で22.5度。昨年夏の戸田は7月、8月と30度を超える日が連日続いたのである。

「正直しんどかったです。どう頑張っても疲労が抜けない時期もありました。でも、そういったなかでも体の状態を保つのがプロの仕事だと思いますし、1年目にこういう経験ができてよかったです。暑さ対策は今のところとくにないのですが、できることをやっていけばそう簡単には体調は崩れないと思うので......。もっとちゃんと生活するとか、そのあたりに気をつけてやっていきたいです」

 そのなかで8月の終わり頃から「体づくりは完全ではないですけど、登板した翌日でも投げられる状態になった」(山本コーチ)と、しんどいなかでやってきた成果が出てきた。

「最初の頃よりも強度の高い運動が続けられますし、ブルペンでも投げるだけで精一杯だったのが、今は質を保って投げることができています。ウエイトや走り込みで基礎体力がついてきていることは、本人も感じていると思います」(鈴木トレーナー)

 そして山本コーチが「坂本は真っすぐが魅力で、球速もまだ出るだろうなと思わせてくれますし、真っすぐで勝負できるピッチャーになってほしい」と言うように、8月24日のDeNA戦では自己最速の149キロをマーク。二軍ではあるが、うれしいプロ初勝利を手にした。

【石川雅規から授かった金言】

 9月半ば頃、松岡健一二軍投手コーチと選手たちのアップを眺めていると、「坂本はキャッチボールの相手がいいですよね。キャッチボールがうまい奥川(恭伸)なんですから」と松岡コーチはつぶやいた。

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