クロマティはなぜ宮下昌己に「伝説の右ストレート」を放ったのか? 篠塚和典が明かす大乱闘の舞台裏 (2ページ目)

  • 浜田哲男●取材・文 text by Hamada Tetsuo

【暗くなっているところを見たことがない】

――ちなみに、クロマティさんが巨人に入団した当時の監督は王貞治さんでしたが、2人の関係はどうでしたか? クロマティさんが王監督をリスペクトしていた、というお話はよく聞きますが。

篠塚 王さんは言葉で上手に選手を乗せていくタイプで、クロウともけっこうコミュニケーションを取っていました。同じ左バッターですし、王さんはあれだけの成績を残された方。技術面のアドバイスはすごく参考になったと思います。

 その点で、王さんとミスター(長嶋茂雄氏)はちょっと違いますね。ミスターは自分の体の動きを実際に見せることが多いのですが、王さんの場合は選手たちと積極的に会話をしてコミュニケーションをとっていました。ある時はひとりの選手を、みんなの前で怒る時もありましたよ。

――どんな時に怒っていましたか?

篠塚 試合が終わった後、すぐに全員を集めてミーティングを開いて怒ることもありました。そうすると、周りにいる選手もピリっとする。全体的な話だと当事者意識が生まれにくいこともありますが、ひとりの選手が名指しで怒られると、「自分も言われるかもしれない」と緊張感が生まれます。一方、ミスターはあまり怒ったりする方ではなかったかなと。

――クロマティさんの話に戻ります。ファンと一緒になってバンザイをするパフォーマンスをしていましたが、普段から明るい方ですか?

篠塚 明るいですよ。暗くなっているところをほとんど見たことがありません。だけど、あのバンザイはいったいどこから発想を得たのか(笑)。今度会った時に聞いてみようと思います。

――ちなみに、2007年にはプロレスラーとしてもデビュー(同年6月にさいたまスーパーアリーナで開催された「ハッスル・エイド2007」で、タイガー・ジェット・シンと対戦して勝利)。乱闘の相手だった宮下さんが、クロマティさんの応援で会場に駆けつけていました。

篠塚 プロレスもパフォーマンスの一部でしょう(笑)。彼は現役中にバンドを組んで音楽もやっていましたし、いろいろなものに興味がありましたからね。バンザイのパフォーマンスもそうですが、「人を楽しませたい」という気持ちが強いんじゃないですか。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る