元阪神のエース・川尻哲郎の今 「飲食店をやるつもりは全くなかった」ものの新橋で出店した理由 (3ページ目)

  • 石塚隆●取材・文 text by Ishizuka Takashi
  • 長谷部英明●撮影 photo by Hasebe Hideaki

【若い選手たちが考えながらプレーしているから、来年も大丈夫】

── 川尻さんが接客をするんですか?

川尻 ええ、そうですよ。阪神の試合中継を流しながら、お客さんから訊かれれば大事なポイントなど解説することもあります。

── かつてのエースにそんなコミュニケーションをとってもらえて、来店したファンの方々も喜ぶでしょうね。

川尻 ありがたいことですよね。まあ、僕よりも昔のことを知っているファンの方もたくさんいますし(笑)。ゲーム観戦以外にも、OBを招いてのトークショーも定期的に開催しています。あと、甲子園ではもうできないであろう、ジェット風船をラッキーセブンの時に飛ばしたりもします。

── え、ジェット風船を飛ばすんですか!

川尻 はい。だから空気を入れるポンプがうちにはたくさんあるんですよ。あとね、多分僕がOBの中で一番応援歌を知っていると思います。ほとんどの選手のを歌えますからね(笑)。とにかく皆さんが喜んでいる姿を見るのは好きだし、ここに来て「楽しかった」「また来ます」「美味しかったです」と、満足して帰ってもらえるのが一番ですよ。

── 食事にも力を入れているようですね。オススメは何でしょうか?

川尻 妻が厨房に入っているんですけど、元々アスリートフードマイスター1級を持っているので、料理や栄養には精通しているし、味にも自信がありますよ。『川尻哲ローストビーフ』っていうのがあるんだけど、これが看板メニュー。いつも「美味しい」って食べてもらって、昨日も売り切れになりました。手間はかかるけど、肉系のメニューは充実させています。そのあたりで手を抜いてしまうと商売になりませんからね。

一番人気の「川尻哲ローストビーフ」

── 阪神ファンにとって『TIGER STUDIUM』は、テーマパークのような場所ですね。

川尻 そうそう、まさにそれを目指しているんですよ。来てくれたお客さんが、楽しいなって思える場所を提供したい。開店した当時はこの商売に慣れなくて大変なことも多かったけど、阪神を応援してくれる人に喜んでもらいたいっていうのが根底にあるので、今後もやれることはやっていきたいです。

── じゃあ、阪神には今年も頑張ってもらわなきゃいけませんね。

川尻 おかげさまで年末年始も忙しかったし、今年も楽しみにしていますよ。チームのムードもいいし、去年以上に開幕は盛り上がるでしょうね。他球団からマークされて厳しい戦いになるでしょうけど、若い選手たちが考えながらプレーしているから、きっと大丈夫だと思います。

『TIGER STADIUM』の店内『TIGER STADIUM』の店内『TIGER STADIUM』の店内

【Profile】

川尻哲郎(かわじり・てつろう)/1969年1月5日生まれ。日大二高、亜細亜大、日産自動車を経て、1994年のドラフト会議で阪神タイガースから4位指名を受け入団。1996年に自己最多となる13勝。1998年にはノーヒットノーランを達成(対中日ドラゴンズ戦)するなど、最下位に終わったチームの中、10勝をあげる。2003年オフに大阪近鉄バファローズへトレード移籍後、球界再編に揺れた2004年オフに、当時の新球団であった東北楽天ゴールデンイーグルスに分配ドラフトで入団。2005年シーズンをもって現役引退。プロ野球通算227試合に登板(163先発)、6072敗。

TIGER STADIUM
東京都港区新橋3-11-9 烏森通りビル 5F
TEL:03-3578-3336
https://tiger-st.com/
店内では阪神戦の観戦や応援が可能。一番人気は『川尻哲ローストビーフ』

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