2023年野球界10大ニュース WBC制覇、大谷翔平のMVP、阪神のアレ、オリックス3連覇... (3ページ目)

  • 田口元義●文 text by Taguchi Genki

38年ぶりの日本一を果たした阪神ナイン photo by Sankei Visual38年ぶりの日本一を果たした阪神ナイン photo by Sankei Visualこの記事に関連する写真を見る

【阪神38年ぶりの日本一】

 阪神の岡田彰布監督が初めて「アレ」を口にしたのは、オリックスを率いていた2010年だと言われている。交流戦制覇が現実味を帯びてきた頃、選手やコーチに優勝を意識させないための配慮として「アレ」を公言するようになり、見事実現させた。

 そして、2008年以来2度目の阪神監督となった22年10月の就任会見で、岡田が再び明言したことで「アレ」が復活した。

 今シーズンは開幕3連勝で勢いに乗ると、後半戦に突入してもチーム力は衰えることなく、迎えた9月14日。甲子園球場での「伝統の一戦」となった巨人戦で4−3と勝利し、18年ぶり6度目の「アレ」を達成した。セ・リーグ全球団に勝ち越すなど、強さが際立った。

 シーズンの戦いぶりを振り返ると、投打ともに岡田野球が色濃く打ち出されていた。

 野手は守備、走塁を徹底的に洗い直したことで、近本光司と中野拓夢の「1・2番コンビ」やショートの木浪聖也たちが持ち味を存分に発揮。一発のある大山悠輔や佐藤輝明のクリーンアップとのつながりも円滑に運び、チーム打率は2割4分7厘ながらリーグトップの555得点を記録した。

 それ以上に際立ったのが投手陣の奮闘だ。昨シーズンまで2年連続で13勝を挙げ、今シーズンも開幕投手を務めたエースの青柳晃洋が不調の誤算をカバーしたのが村上頌樹だ。プロ未勝利だった3年目右腕は、10勝、防御率1.75をマークし、144回1/3を投げ四死球はわずか16と抜群の安定感を披露。新人王とリーグMVPに輝いた。

 また現役ドラフトで加入した大竹耕太郎も12勝を挙げるなど、新戦力の台頭もチームの快進撃を支えた。

 盤石の戦力を擁して臨んだオリックスとの日本シリーズでも、前年の覇者を4勝3敗で退け38年ぶりの日本一も達成。リーグ優勝と日本一。指示代名詞を貫き通し大願成就させた阪神の「アレ(A.R.E)」は、流行語大賞の年間大賞に選ばれた。

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