近鉄最後の優勝戦士、北川博敏と交代して代打逆転サヨナラ満塁ホームランを見届けた男の今 古久保健二は日本→韓国→台湾で指導者になった (4ページ目)

  • 阿佐智●文 text by Asa Satoshi

 台湾スタイルといえば、華やかなチアガールを内野スタンドに配した応援は、日本の野球ファンにもおなじみのものになっている。このスタイルはもともと韓国から取り入れたもので、チアリーダーを導入する前から台湾の応援スタイルは音響機器を使った非常にうるさいものだったが、これについても古久保は自然に受け入れたという。

「韓国を知っているだけに驚きはなかったですよ。それが台湾の文化なんやろうって。たまにきれいな女性がいるなと思いますが、試合中は気になりません。でも、音は日本以上です。マイクを使っていますからね。試合中、絶対に声は選手に届きません。だからゼスチャーでコミュニケーションをとるように野手には指導しています」

【低反発球採用で台湾の野球に変化】

 一歩引いた目で台湾野球を支えているが、思うところは当然ある。台湾では伝統的に各カテゴリーにおいて国際大会を重視するが、プロ主体のトップチームは近年、芳しい成績を残せていない。夏のU−18ワールドカップでは銀メダルに輝いたが、春のWBCは1次ラウンドで敗退している。そんな台湾野球のトップレベルに対して、古久保はこう語る。

「こっちはアマチュアのトップ選手は、まずアメリカを目指しますので、国内のプロリーグはどうしても層が薄くなります。だから、一軍でもレギュラーと控えの差が大きい。一旦ポジションを獲れば、ライバルがいない状態になるんです。だから、どうしても『それ以上』がなくなってしまいます。なので、彼らがうまくなりたいという気持ちをどこまで持っているか、どこに目標を置くかが大事になってきます。それに向かってどれだけ努力できるか。それを我々がどうサポートするかでしょうね。今後、台湾では球団数が増えます(来年から1球団増)。そうなると選手層は薄まっていく可能性があります。もう二軍の選手をどう鍛えるかでしょうね」

 台湾のプロ野球は、数年前までいわゆる「飛ぶボール」を採用していたせいで、豪快な打撃戦がウリだった。序盤に多少点差をつけられても、逆転が期待できるためファンは大盛り上がりだった。しかし、それも投手力の弱さの裏返しであったし、国際大会での不振は、その打力も「井の中の蛙」でしかなかったことを露呈してしまった。

4 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る