2017年夏の甲子園準優勝 広陵を支えた背番号18の主将が中村奨成に送るメッセージ「プロ野球が終わった時に周りに誰もいなくなるぞ」 (4ページ目)

  • 元永知宏●文 text by Motonaga Tomohiro

【問題を起こした中村奨成に言ったこと】

 中井監督に「プロになれよ」と言われた岩本だが、それを目標にすることができなくなっていた。

「体の状態、今の技術を考えると、プロに行ける可能性はほぼ100%ない。アマチュアのなかでもトッププレーヤーしか行くことができない世界に、今の体で向かっていくのは現実的じゃないと思いました。だから、野球を引退するという決断をしました。たくさんの方々のおかげで社会人野球までくることができ、応援していただいた方々に本当に心から感謝しています。自身のなかで悩み、考え、ここで区切りをつけようと思いました。将来的には、プロ野球や社会人に進んだ同期や後輩をサポートできるような知識を持ちたいと思います」

 高校の同期である中村をはじめ、プロ野球でプレーする広陵OBは多い。この秋のドラフト会議では2年後輩の高太一(大阪商業大)が広島2位、石原勇輝(明治大)がヤクルトから3位指名を受けた。

「プロ野球に対する憧れは今でもあります。そして、プロに進んだ仲間に負けたくない気持ちも人一倍あります。しかし、自分の野球人生をあきらめ、社会人として一歩でもリードしてやろうと。現役生活が終わった時に浮かんだ言葉は"感謝"です」

 ユニフォームを脱いだ今、野球を続けているかつてのチームメイトに対して何を思うのか。やはり、女性問題を起こしたあの選手のことが気になって仕方がない。

「奨成は僕たちの学年の顔です。僕は、誰であっても広陵の3年間をともにした仲間を見捨てることはしません。もちろん、奨成にも話しました。プロ野球選手としての責任、自覚、立場、それぞれにしっかり分別を持たないと『プロ野球が終わった時にまわりに誰もいなくなるぞ』と言いました。いい時も悪い時も、あの夏の甲子園があるから話題になる。今一度それをしっかりと認識しないといけない。それは本人が一番わかっているはずです」

 岩本にとって中村は特別な存在だ。おそらく、中村にとってもそうだろう。

「あのチームのキャプテンが僕で、3番でキャッチャーだったのが奨成。グラウンドでも寮でもずっと一緒にいて、いろいろなことについて話をしてきました。奨成の一連の報道についても、プロに行く前から口酸っぱく言っていれば、こんなことにはなっていなかったのではないかと思います。普段からもっと密に連絡をとっていれば......僕が悪いです。決して他人事とは思っていません。厳しいプロの世界のなかで、勝ち抜き、活躍することは本当に難しいことだと思います。しかし、奨成ならやってくれると信じています。ずっと応援していますよ」

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