侍ジャパン井端弘和監督がわずか4試合で証明した指揮官としての才 選手起用、ゲームプラン、采配が見事だった (3ページ目)

  • 氏原英明●文 text by Ujihara Hideaki

「小園選手はどの打順においても、自分の持ち味を発揮してくれるタイプ。彼のような選手は本当に使う側としては助かりますね。どこにおいても活躍しますから、周りの様子を見ながらいろんなバリエーションで使うことができる。森下選手の調子がよかったので、その前に置いて、チャンスをつくってほしくて2番にしました」

 その言葉どおり、小園は打率.412をマークする大活躍で打線を牽引した。

 選手のストロングポイントや状態を熟知しているのは、観察力に長けているからだろう。

 そしてもうひとつ、今回の優勝に欠かせなかったのが決勝戦、延長10回タイブレークでの送りバントだ。1点ビハインドで10回裏の攻撃に入った侍ジャパンは、3番の森下から始まる好打順だった。調子のいい森下をそのまま打席に立たせると思われたが、ここで井端監督は代打に古賀悠斗(西武)を送ったのだ。

 井端監督がその意図を説明する。

「10回の好機(無死一、二塁)が流れのなかでのものなら、そのまま森下選手に打たせていたと思います。流れのなかではなくタイブレークだったので、1点差ならバント、2点差なら森下。これは森下に限らずですが、合宿の頃から決めていました」

 そこで古賀を起用したわけだが、そのビジョンは合宿の時から通達しているというのが、また用意周到だった。この日だけでなく、全試合前に古賀には「タイブレークになったらバントで出すからな」と伝えていたのだ。

 そしてこう続けた。

「普段のチームでもバントをしっかり決めていましたし、今回の控え選手のなかでは一番うまいという信頼がありました。送り出す時は『頼む』だけですね。自分も代打でバントの経験があるのでわかるんですけど、あの場面でリラックスしろと言われても絶対にできない。自分の経験上『頼む』と言われたほうがラクだった。たぶん、古賀選手は人生で一番緊張したと思うんですけど、あの場面で決めたくれたことにグッとくるものがありました」

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