「素材は超一級品!」ヤクルトのドラ2松本健吾が150キロを連発するようになった「ある特訓」とは? (3ページ目)

  • 徳吉刑事●取材・文 text by Tokuyoshi Keiji

【折れたバットを使った特訓で150キロを連発】

「川尻コーチが現役時代にやっていた『折れたバット』を使ったシャドーピッチを、毎日の日課として続けた成果」

 球速がアップした秘訣を、松本はこう明かす。

 いわゆる「タオルシャドー」との違いを、当の川尻コーチに尋ねてみた。

「通常のタオル(シャドー)だと、どうしても腕の振りが大きくなってしまうのが難点で......。松本の場合は身体が開きやすいこともあり、(危なくないようにヤスリをかけたうえでテーピングを施した)折れたバットのほうが適度に重さやグリップもあって握りやすいので、腕の振りをコンパクトに修正できるという利点があります」

 また、「現役当時は細身の竹を使っていて『それに近いものが何かないか?』と探していたら、たまたま折れたバットがあった。というか、たくさん(笑)」ともつけ加えた。そのリサイクル精神は奇しくもトヨタ本社が掲げる『SDGs』『サステナブル』の理念にも合致して、まさに"一石二鳥"といったところか。

 同年秋の日本選手権では、2回戦のパナソニック戦で自身2大大会初の先発を任された。

 初回は緊張からか制球が定まらず、ストレートの四球を与えるなど得点圏に走者を出してしまう。しかし、相手の4番には「アドレナリンが出る感じ」で投げ、ボール球ながら自己最速更新の152キロを計測。結局、遊ゴロに仕留めて、先制のピンチを切り抜けた。

 するとその後は、あれよあれよの快投で、結果的に許したヒットは内野安打1本のみ。亜大時代には成し得なかった150キロ台を連発すること、実に19球。威力十分の真っ直ぐに決め球のフォークやスライダーなどの変化球を織り交ぜ、計8個の三振はすべて空振りで奪ってみせた。

 球数も117球の省エネ投球で、2回以降は二塁すら踏ませず、社会人初完投&初完封を飾った。また内野安打はボテボテの当たりが幸いしたもので、実質「みなしノーヒットノーラン」と言っても過言ではないだろう。

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