「シノさん、しっかり伝えてよ!」監督・原辰徳の厳しさを盟友・篠塚和典が明かす (2ページ目)

  • 浜田哲男●取材・文 text by Hamada Tetsuo

【原の監督としての厳しさと特長】

――原さんとは、お互いに指導者になられてからの関係も長いと思いますが、指導者時代に印象に残っていることはありますか?

篠塚 原は監督時代、コーチに対して厳しかったですね。僕らコーチがサインで指示を出していても、選手がボーンヘッドをしてしまう時があるじゃないですか。なぜそうなってしまったかも説明するんですが、原は「シノさん、選手がちゃんとやってないじゃない! やってないってことは、伝えてないことと同じだ! しっかり伝えてよ!」と。そういったやりとりを、試合中にしたこともあります。

 現場では監督が一番上ですし、年齢は関係ない。監督としての厳しさを常に持っていたと思います。ボーンヘッドでも選手ではなく、コーチを叱っていましたね。

――他に印象に残っているエピソードは?

篠塚 ある試合で、交代で入る選手を守備位置につかせた時です。僕らとしては監督が指示した通りのポジションに選手をつかせたつもりだったんですが、「指示したポジションと違う」となって。「指示したポジションにちゃんとつかせていけば、試合もスムーズに進むわけでしょ」と言われましたが、試合の流れを分断されることを特に嫌っていましたね。

 でも......今だから言えることでもありますが、その交代に関しては、僕らが間違ったわけではなく、原が自分で指示したポジションを忘れていたと思うんです(笑)。そういう点は、けっこうミスターに似ているところもありましたね。

――原さんは監督として歴代9位の通算1291勝を挙げ、9度のリーグ優勝、3度の日本一を達成。監督として優れている部分について、篠塚さんはどう見ていましたか?

篠塚 近年は、自分はチームを外から見ていたこともあってわからない部分もありますが、コミュニケーション能力に長けていると思います。実績がある中堅やベテランの選手をスタメンから外す時などは、必ず本人を呼んで話をしていました。

 自分の考えをしっかりと伝えて、本人に納得してもらおうとする努力が見えましたね。若手を外す時などはコーチに任せていたと思いますが、中堅やベテランに関しては直接話をするといった気遣いを感じました。話し合いの場を作ったりしてチームをまとめていた印象です。

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