ヤクルト奥川恭伸は来季、完全復活なるか 22球に込めた思いと手応え「やりたいと思っていることの70%くらいはできた」 (2ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya

 来季を見据えるうえで、守備面で課題に挙げていたけん制の練習にも熱心に取り組んでいた。

「投げることに集中したいという意味では、それ以外の不安をひとつでも消したほうがいい。それが結果にも直結していきますし、けん制やクイックなど、ちょっとでもランナーを抑えるのはすごく大切なのかなと......」

 奥川にけん制のアドバイスをしていた松岡健一二軍投手コーチは、「賢い選手です」と話した。ふたりは「頭が動いている」「こうやればターンの動きが最少になるよ」など、いろいろ試しながら練習していた。松岡コーチは言う。

「こういうやり方もあると言えば、『これは投げやすいですね』『これはやりにくいです』とはっきり言う。夜間練習している時に、石山(泰稚)のけん制の話をしていたら、『面白いですね』とすぐにやれちゃうんですよ。なんでも吸収していくというか、感覚も研ぎ澄まされているのでアドバイスしやすいです」

 練習メニューのひとつでもある"試合見学"は「見るのは好きです」と話しながらも、自身がマウンドに立った時をイメージして観戦しているようにも見えた。

「普段はイースタン・リーグなので、(フェニックスでは)ウエスタンの選手だったり、とくにCS(クライマックス・シリーズ)に出るチームは一軍の選手が試合に出ていたので、そういうところも見ていました」

 ところがその後、フェニックスの実戦で奥川が投げることはなかった。16日にブルペンで捕手を立たせて30球ほど投げるも、いつもと違い終始無表情だった。

【フェニックスでの途中帰京の理由】

 その翌日の朝、球場にチームバスが到着。バスから降りてくる奥川の手にはスーツケースが握られ、一度球場入りしたあと、スーツに着替えて再びバスに乗り込むと、そのまま球場をあとにしたのだった。

 奥川はフェニックスで途中帰京した時のことをこう振り返った。

「もちろん投げる予定でしたので投げたかったんですけど、不調もあって投げられなかった。ちょっと予定外という感じでした」

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