巨人・阿部慎之助新監督のポリシーを広岡達朗は大絶賛も「優勝はあと3年かかると見てあげたほうがいい」 (2ページ目)

  • 松永多佳倫●文 text by Matsunaga Takarin

「中日監督時代の落合(博満)にしたって、まず猛練習できるまでの体力をつけさせることから始め、そこから徹底的に鍛え上げた。マスコミにすべてを見せなかっただけで、練習量は相当なものだった。絶対的な体力と練習量がなければ、あれだけ強いチームをつくることはできないはずだ」

【組織を高みに導くのに古いも新しいもない】

 そして広岡は、秋季キャンプでの阿部の姿を見て感心したという。

「宮崎キャンプを見たけど、投手陣は300メートルのトラックを、インターバルをとりながらとにかく走らせていた。野手陣は体幹を鍛える練習として、長い棒を担ぎながら地面すれすれまで足を開いた姿勢を10秒以上やらせていた。しかも監督である阿部も一緒にだ。これこそ率先垂範(そっせんすいはん)である。監督自らやれば、選手だって文句は言えない」

 広岡も監督時代は選手と一緒にランニングをし、ノックも自ら手本となるべく受けていた。かつて西武黄金時代の遊撃手だった石毛宏典は、こんなことを語っていた。

「初めからけちょんけちょんに言われたら、こっちも頭にきますよ。でも広岡監督が『おまえの守備はこうなんだ』と、自ら僕の真似をして見せるんです。『えっ、オレってこんなにカッコ悪いのか......』と思って周りの選手に聞くと、『そっくりですよ』と言われて、そこから監督の言うことを素直に聞きました」

 広岡は監督になってからも体力維持に気をつけ、50歳で西武の監督になってからも選手と一緒に汗を流していた。

「ウエイトトレーニングを過度にやることで、脂肪太りになっている選手が今の巨人には多い。野球で使う筋肉は野球で鍛え上げ、足りないところをウエイトで補うものなのに、体づくりと称して先にウエイトばかりやるからバランスの悪いみっともない体型になる。ウエイトさえやっておけばいい、という風潮を早くなくすべきだ」

 広岡には「プロフェッショナルである以上、ユニフォーム姿も美しくなければならない」という持論がある。それは首脳陣も同じで、腹の出たコーチが息を切らせながらノックを打って、選手を鍛えられるはずがない。常日頃から「首脳陣も体を鍛えておけ」と、広岡が口酸っぱく言っているのはそういうことだ。

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