阪神・岡田彰布監督が語った「采配合戦」の怖さ「外れた時の大きさのほうを考えたら...簡単にサインなんて出せない」 (3ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke

 オリックスはセットアッパーの山崎颯一郎がコンディション不良からか、2戦連続でベンチ外となったなか、最終回に登板したワゲスパックの乱調が響いた格好だ。そうした起用も含め、両監督の「采配」が見どころとなった一戦だった。

 とりわけ勝負を分けたポイントのひとつが、前述した8回表だ。代打の代打が送られ、スクイズも想定されたなか、岡田監督はどう考えていたのか。記者に問われると、じつに興味深い回答をしている。

「采配てねえ、外れた時の大きさのほうを考えたら、なかなか出せんよ。そんな簡単にスクイズとかね、できないって。短期決戦では余計に。それで一気に流れもいってしまうわけやからな。それほどサインのひとつ言うたら、怖いことやから。そんな簡単にね、一、三塁やからセーフティースクイズとかって、できへんて。口で言うのは簡単やけど、見てるほうは簡単やけど、そんなんできないって。ひとつのミスが流れを変えてしまうんやから。今日のゲームを見たら、わかるやんか。ひとつのミスで、これだけゲームが変わるわけやからな。そんなん、簡単にサイン出されへんて」

 相手がチャンスで動いてくるのかどうか、心理状態まで踏まえて判断し、自チームの手を決めていく。「采配」にはそこまで含まれるのだ。ただ送りバントや盗塁、スクイズのサインを出すことだけが、監督の決断ではない。相手が動いてこないだろうと読めれば、勝負の流れに影響を及ぼせるわけである。

 セ・パをぶっちぎりで制したふたりの知将の真っ向勝負で生まれた、日本シリーズ第4戦の大熱戦だった。

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プロフィール

  • 中島大輔

    中島大輔 (なかじま・だいすけ)

    2005年から英国で4年間、当時セルティックの中村俊輔を密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『山本由伸 常識を変える投球術』。『中南米野球はなぜ強いのか』で第28回ミズノスポーツライター賞の優秀賞。内海哲也『プライド 史上4人目、連続最多勝左腕のマウンド人生』では構成を担当。

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