投手四冠・山本由伸のKO劇の最大の理由はカーブ なぜ伝家の宝刀は封じられたのか (2ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daishuke

【阪神打線のいやらしさ】

 カーブを思うように制球できない山本に対し、阪神打線はしたたかだった。1回り目は2番・中野拓夢のヒット1本に封じられたものの、4回からの2回り目以降はボール球をしっかり見極め、ストレートは逆方向中心にコンパクトに打ち返し、フォークにも対応していく。4回無死一、二塁の場面は3番・森下翔太がショートゴロ併殺、4番・大山悠輔が見逃し三振に倒れたが、5回に再び襲いかかった。

 先頭打者の佐藤輝明は内角寄りに投じられた152キロのストレートに詰まらされながらも、センター前に弾き返す。直後、6番ノイジーの初球で二塁への盗塁を決めてみせた。「初球はちょっとまさかでしたね」と若月は率直に語ったが、佐藤にすれば完璧なスタートだった。

 足を絡めて得点圏にランナーを進めると、ノイジーは1ボール、1ストライクから内角に投じられたフォークをうまく逆方向に打ち返し、ライトフライの間に佐藤が三塁へ。ノイジーは初球でフォークを見ていた分、3球目で再び投じられたこの球種にうまく対応できたのだろう。

 つづく7番、"直球破壊王子"こと渡邉諒は内角に投じられた155キロのシュートに詰まらされたが、二遊間を抜ける当たりで先制点をもぎとった。

 山本にすれば、強いボールで押し込みながらも不運な当たりが重なっての失点だった。だが、リードする若月には阪神打線のいやらしさが刻み込まれた。

「結果的には不運なヒットも多かったです。でも、その後のノイジーにもしっかり逆方向にフライを打ちにいかれましたし。ランナーが自然とどんどん進んでいくというか、みんな本当にタダでは終わらず、そういうなかでの嫌らしさや怖さみたいなものがありました。最初の1点は、会心のヒット0本でとられてしまいましたし。(阪神打線のいやらしさは)そういったところですよね」

 阪神は渡邉のタイムリーで1点を先制した直後、つづく木浪聖也が真ん中高めに投じられた154キロのストレートをライト前に弾き返し、9番・坂本誠志郎が送りバントを失敗した後、1番・近本光司は真ん中に甘く入った156キロのストレートを右中間に2点タイムリー三塁打。2番・中野は真ん中低めのフォークをうまく拾ってレフト前タイムリーとし、山本から一挙4点を奪ってみせた。

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