広島・矢崎拓也「自分がやらかすことに飽き飽きした」入団から失意の5年を振り返る (2ページ目)

  • 前原淳●文 text by Maehara Jun
  • photo by Sankei Visual

── 数字を突きつけられる現実や一軍に上がれない現状と、どう向き合ってきましたか。

矢崎 向き合えていたのかどうかもあやしいかもしれませんね。「もっとこうだったらいいのに」という気持ちはありましたけど、どれだけ突き詰めようとも相手がいる競技なので、やられることも抑えることもある。でも当時は、周りの環境や新しい環境にフィットしていないのかなとか、自分のことではないところを言い訳にしていたと思うので、そういう意味で向き合えていたかと言われると、ちょっとあやしい感じはあります。

── 向き合えていなかったと感じる時間は、しばらく続いたのですか。

矢崎 長かったと思いますね。環境の変化に弱いというか、二軍から一軍に上がる時もそうでした。プレッシャーの度合いなどが変わることに弱いというか、100%自分に?委ねきれないという感じだったんじゃないかと思います。

【同じ失敗を繰り返す自分に飽きた】

── プロ入りしてから5年、なかなか一軍に定着できませんでした。殻を破りきれない時間をどのようにとらえていましたか。

矢崎 当時は「もう終わるんじゃないかな」というのは普通にありました。明確に覚悟を決めていたかと言われたら微妙ですけど、自分の置かれた状況が見えないほどではなかったです。

── そういった危機感が焦りに変わることはなかったですか。

矢崎 そこまではなかったですね。やることは目の前のことだけなので。

── 2021年から始めた座禅によって、現状を受け入れながら自分自身をコントロールできるようになったと思いますか。

矢崎 座禅だけでなく、すべての経験がつながったのかなと思います。座禅の効果はもちろんあると思いますけど、あとは何か心底イヤになったんですよね。それまでの5年間、ここがチャンスという場面でつかめなかった。やられるにしても「自分の実力が足りなかった」と受け入れられたらよかったのかもしれませんが、毎回逃げているというか、自分から手放している感じがありました。5年目に先発でちょっと投げて、中継ぎで(一軍に)上がった時もそう。自分の実力を発揮する前にやられて、自らそのチャンスを手放している感じ。プレッシャーに負けて......とか、もう何回目なんだろうと。5年目が終わった時に、「この失敗の仕方に心底、飽き飽きしたな」と思ったんです。

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