NHKからBCリーグ監督、そして西武へ 伊藤悠一の信念は「あえて見えない世界に飛び込むことで自分の人生が豊かになる」 (2ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • 写真●茨城アストロプラネッツ提供

「目標が達成できるのであれば、手段は任せます。セミナーでも1on1の面談でも、日々の振り返りをしっかりやってフィードバックしていくことでもいい。我々は人財開発のプロを雇っているわけではないので、毎年いろいろ試行錯誤しながらブラッシュアップしていけばいいという考え方です。

 なおかつ、その取り組みを人財開発だけで行なうのではなく、コーチやS&C(ストレングス&コンディショニング)、バイオメカニクス(動作解析)やほかのスタッフとコミュニケーションをとりながら、うまく進めてほしい」

 上記の役割を任せるうえで、伊藤監督は十分な実績を備えているように市川室長の目に映った。NHK時代にはカメラマンや音声担当、脚本家など"職人"たちをうまくディレクションし、独立リーグでもその力は発揮されているように感じられたからだ。市川室長が続ける。

「野球界は選手も含めて職人が多いです。そういう人たちと、どう向き合っていけばいいか。伊藤さんはすごく知識と感性があるのではと感じています」

 かたや、伊藤監督には「NPBでチャレンジしてみたい」という願望があったが、もともと抱いていたわけではない。独立リーグの世界に飛び込み、6月頃に湧いてきた思いだ。

「とくに茨城はNPBに行きたい選手たちが集まる場所です。NPBはいかにすごい舞台なのか、目指す価値がある場所なのか、彼らと話す中で聞いていました。独立リーグもすばらしい舞台ですが、NPBという日本最高峰の選手と指導者、スタッフが集まる場所でやることで、自分自身がステップアップできるのではと思うようになりました。監督になる前や、就任してすぐの頃にそう感じたわけではなく、アストロプラネッツで1年すごし、『自分は人を育成する立場でNPBを目指したい』と思うようになりました。そんななか、たまたまライオンズからお話をいただいたという次第です」

【スタッフのキャリアアップもあと押し】

 アストロプラネッツは選手だけでなく、指導者やスタッフもキャリアアップできるようにあと押ししている。たとえば、昨季まで在籍した小山田拓夢S&Cコーチは腕を買われて日本ハムに羽ばたいた。西武のオファーに心を動かされた伊藤監督も、新たな挑戦に快く送り出されることになった。

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