岡本和真に「もっと険しい表情で打席に立て!」 広岡達朗が唱える「真の4番」とは (2ページ目)

  • 松永多佳倫●文 text by Matsunaga Takarin
  • photo by Koike Yoshihiro

 そうフォローする広岡だが、岡本には巨人の不動の4番として期待しているからこそ、厳しい言葉が続く。

「岡本については、打席での表情にもっと険しさがほしい。まだ相手投手にプレッシャーを与えるほどではない。それに岡本がファーストを守っている時、相手バッターが出塁してベースに来ると、自ら頭を下げて一礼している。礼儀は必要だけど、一歩グラウンドに入ったら戦う男として威風堂々としているべき。チーム内で岡本に『いちいち頭なんか下げなくていい。そんなことは試合前にやっておけばいい』と言う人間がいたら、岡本はもっと伸びるはず。素材自体は間違いなくすばらしいんだから」

 もはや数字だけではなく、チームの主砲、巨人の4番として凛とした態度で臨むことが、リーダーに求められる資質である。伝統ある巨人、そして阪神の4番というのは、そういう格付けのもとにあるのだと、広岡は言いたいのだ。

【大山悠輔が真の4番になる条件】

 では、18年ぶりにセ・リーグを制した阪神の4番・大山悠輔についても聞いてみた。

「大山は一生懸命やっているけど、まだまだ甘い。グラウンドで緊張をほぐすために笑っているのかもしれないけど、あんなに笑っている暇はあるのか。打席に入ったら睨みをきかせて、相手の選手はピンとなるくらいにならないと4番の資格はない。

 かつての巨人不動の4番・川上哲治がそうだった。打席に入ったら"動かざること山の如し"で、微動だにしなかった。あの鋭い眼光を向けられたら、そんじょそこらのピッチャーは簡単に飲まれてしまう。また、ある日本シリーズでカワさん(川上)が絶不調だった。すると試合前、『自分が出ると迷惑がかかるから出ない』と言い出したことがあった。するとほかの選手たちが『カワさんが出ないでどうするんですか。いるだけで違うんですから出てください』と言い出した。どんな状況でもナインの信頼を得てこそ、本当の4番なんだ」

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