なぜオリックスは続々と新戦力が台頭するのか ルーキー茶野篤政を育てた最強の育成戦略 (3ページ目)

  • 阿佐智●文 text by Asa Satoshi
  • photo by Koike Yoshihiro

【きっかけはオリックスとの交流戦】

 そうした球団の方針のなか、茶野は「プロスペクト(有望株)」として強化されることになった。

「まだ力はありませんでしたが、三拍子揃っていましたし、足も速くなりました。だからNPBへ行けるんじゃないかという期待です。とはいえ、実際に指名されるところまでは想定していませんでしたけど」

 転機になったのは、オリックスとの交流戦だったと岡本は振り返る。

「昨年6月15日のオリックスとの試合で結果を出して、本人もやれるんだと手応えを感じ、一気に階段を駆け上がっていったような気がします」

 この試合で茶野は4打数4安打を放ち、盗塁も決めた。この活躍を、オリックスの福良淳一GMが見逃さなかった。

「あの試合の結果はたまたまじゃないです。本人がしっかりNPBを目標にしていたからこその結果です。あの時は、それだけの結果を残すだけの力を蓄えていました。もちろん、NPBのファームの選手に比べればまだまだ劣っていましたが、彼の潜在能力をGMやスカウトの方が見てくれた。それは、それまでの取り組みがあったからこそだと思うんですよね」

 その試合以降、プレー自体が変わっていった茶野を、岡本はこう表現する。

「なんて言うのかな、野球の花が咲いてくるような......そういう手応えはありました。若い選手はひとつのことがきっかけで、体の中から湧き出てくるようなものがあるんです」

 ドラフト前には数球団から調査書が届いたが、最後まで何が起こるかわからないのがドラフト。当日はなかなか名前が呼ばれずにやきもきしたが、オリックスから育成4位で指名されると安堵の表情が浮かんだ。

【奇跡を起こしたオリックスの育成システム】

 オリックスに入団し、プロ初のキャンプに挑んだ茶野だったが、身分は育成選手。そのままでは一軍の試合には出場できない。キャンプでの茶野の目標は、残り数枠の「支配下登録選手」になることだった。

 とはいえ、育成4位の茶野が一軍の戦力になれるかどうかを試してもらうチャンスなど、当初はほとんどなかった。ここから約2カ月で一軍のレギュラーに上り詰めたのだが、この茶野の"シンデレラストーリー"には、オリックスの球団戦略が見え隠れすると岡本は言う。

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