栗山英樹監督から手紙で告げられた開幕投手に斎藤佑樹は涙 「僕の不安な気持ちと監督の覚悟が込められていて...」 (3ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Sankei Visual

 ファイターズでは高卒5年目、大卒と社会人出身2年目までの選手を対象に毎朝、いろんな人が講義をしてくれます。その講義に、監督に就任した直後の栗山さんが来て下さったことがありました。その時に栗山さんは、野村克也さんに聞いた話をしていて、栗山さん自身のことはあまり話をされなかった。だから、栗山監督の考えはどうなんだろう、どういう野球をやるんだろうと感じたことを覚えています。

 でも、そのうちに、栗山監督はこういう野球をやりたい、ということを掲げるのではなく、選手にどういう野球をやりたいのかを考えさせて、それをサポートするためにアドバイスをしようとしている......それが栗山監督のイメージする野球だったのかと思うようになりました。

 野村さんだけではなく、栗山さんのいろんな出逢いから得たヒントを、「斎藤佑樹にはこれが当てはまるかもしれない」「乾にはまた違うヒントがあるのかもしれない」「榎下にはどれがいいのか」と、それぞれが投げる姿を見て、話を聞いて、引き出そうとする......それが"栗山野球"というものなんだと、今となってはよくわかります。

【プロ2年目での開幕投手】

 開幕投手はヤクルトとのオープン戦の時、神宮球場の監督室で栗山監督から手紙を渡してもらう形で告げられました。手紙はその場で読みました......『2012年、開幕投手、斎藤佑樹。ともに戦おう。栗山英樹』。

 それを見て、泣きました。なぜ泣いたのか、言葉でうまく説明できないんですが、僕の不安な気持ちと栗山監督の覚悟がすべて手紙に込められていて、涙が溢れてきたんです。頑張ろう、栗山監督を胴上げしたいと、その時に強く感じました。栗山監督もちょっとウルッとしていたような気がします。

 開幕前日はめちゃくちゃ緊張しました。練習を終えたロッカーで僕がソワソワしているのを感じたのか、稲葉(篤紀)さんに「おまえ、もしかして緊張してるの」と言われたんです。だから「ハイ、緊張してます」と答えたら、金子さんが「今日、飲みに行ってきたら?」と言うんです。「いやぁ、明日、投げるんで」みたいに返事したら、「飲みに行ってさ、二日酔いで明日来いよ。そのぐらいの気持ちでいいんだよ。全然、大丈夫だから」って(笑)。それですごく緊張が和らぎました。

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