DeNA松尾汐恩が明かす22歳差・藤田一也との「奇跡の再会」背中を押してくれた言葉、縁と絆 (2ページ目)

  • 石塚隆●文 text by Ishizuka Takashi

【まさか一緒にプレーできるとは...】

 そういえば......と思った。8月上旬にハマスタで開催された『キッズSTAR☆NIGHT』というイベントで、少年時代の松尾とそれを見守る藤田の写真がバックスクリーンに映っていたのだが、ふたりは昔から知り合いだったということなのか。そう尋ねると、松尾は頷いた。

「はい。あの写真は僕が小学校6年生ぐらいで、一也さんが楽天の時ですね。小学生の時の選抜チームの仲間のお父さんが一也さんと知り合いで、それが縁で自主トレに参加させてもらったんです。以来、一也さんは僕にとって目標というか、見られる時は試合を見ていましたし、かなり影響を受けた方なんです」

 出会った時の藤田は、松尾少年に優しく溌剌とした表情で何度も次のように言ってくれたという。

「プロ目指して頑張れよ!」

 昨日のことのように、松尾はそのことを思い出す。

「一也さんのその言葉はずっと印象に残っていて、自分の背中を押してくれたというか......その言葉があったからプロを目指して頑張ろうって思えたんです」

 憧れのプロの選手のひと言が、野球少年だった松尾の心の支えとなり、そして数年後、偶然にもふたりは同じユニフォームに袖を通すことになった。

「本当に"まさか!"って感じでしたし、入団が決まった時、憧れの人と一緒にプレーができると思うと、本当に喜びでいっぱいでした。一也さんに挨拶に行ったら僕のことを覚えていてくれて、うれしかったです」

 松尾は頬を紅潮させそう語った。今季前半、藤田はファームに帯同されていることが多く、ルーキーの松尾は、偉大な先輩からの言葉はもちろん、一挙手一投足を見逃さないよう食い入るようにプレーを見て学んだ。

「バッティングにしても、チームや勝利を考えたプレーというのはすごいなと思いますし、ポジションは違いますが、フットワークやスローイングを見ても感じることは多いですね」

 時には藤田を質問攻めにすることもあったという。

「とくにバッティングは自分から聞いて、細かいところまで教えてもらっています。一也さんからは『自分からしっかりボールのラインに入っていけ』と言っていただき、打席に入る時は頭を整理して挑むようにしていますね。ほかにも身体のケアだったり、いろんな話をさせてもらっていますし、勉強になることが本当に多いです」

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