江川卓、伝説の球宴8者連続三振 9人目にカーブを投げた瞬間、篠塚和典は「嫌な予感がした」 (3ページ目)

  • 浜田哲男●取材・文 text by Hamada Tetsuo
  • photo by Sankei Visual

【セカンドから見たあのオールスターの一球】

――数々の伝説がある江川さんですが、オールスター(1984年)での8者連続三振は特に印象的です。その時に篠塚さんはセカンドを守られていて、偉業を達成しようかという瞬間を目の当たりにしていましたね。

篠塚 江川さんとパ・リーグのいいバッターたちとの対戦を楽しんでいましたよ。9人目のバッターの大石大二郎(元近鉄)を真っ直ぐ2球で追い込んで、3球目に投げたカーブを当てられてしまったのですが、「なんでカーブを投げるのかな」と思いましたよ(笑)。

――キャッチャーの中尾孝義さん(元中日など)が出したサインに首を振って投げたのがカーブでした。バットに当てられた瞬間、ショックを受けた表情をされていたのが印象的です。大石さんの打球をさばいたのは篠塚さんでしたね。

篠塚 そうなんです。後ろから見ていて、カーブを投げた瞬間に嫌な予感がしたんですよ......その直後にバットに当てられ、打球が一二塁間に転がってきた。大石は2ストライクと追い込まれていて、「三振だけはしないように」と意識していたと思いますし、当てにくる雰囲気がありましたから。「真っ直ぐでいい」と心の中で思っていましたけど、カーブをちょこんと当てられて......あれは本人も、一番悔いが残ったんじゃないですかね。

(後編:江川卓が引退を決意した一球「小早川毅彦にホームランを打たれなければ...。現役を続けてほしかった」>>)

【プロフィール】

篠塚和典(しのづか・かずのり)

1957年7月16日、東京都豊島区生まれ、千葉県銚子市育ち。1975年のドラフト1位で巨人に入団し、3番などさまざまな打順で活躍。1984年、87年に首位打者を獲得するなど、主力選手としてチームの6度のリーグ優勝、3度の日本一に貢献した。1994年に現役を引退して以降は、巨人で1995年~2003年、2006年~2010年と一軍打撃コーチ、一軍守備・走塁コーチ、総合コーチを歴任。2009年WBCでは打撃コーチとして、日本代表の2連覇に貢献した。

プロフィール

  • 浜田哲男

    浜田哲男 (はまだ・てつお)

    千葉県出身。専修大学を卒業後、広告業界でのマーケティングプランナー・ライター業を経て独立。『ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)』の取材をはじめ、複数のスポーツ・エンタメ系メディアで企画・編集・執筆に携わる。『Sportiva(スポルティーバ)』で「野球人生を変えた名将の言動」を連載中。『カレーの世界史』(SBビジュアル新書)など幅広いジャンルでの編集協力も多数。

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