巨人・秋広優人の覚醒に広岡達朗は疑心暗鬼「これほど劇的に変わった選手を見たことがない」 (2ページ目)

  • 松永多佳倫●文 text by Matsunaga Takarin
  • photo by Sankei Visual

 さらに連日の紅白戦でのヒット連発により、第2次沖縄キャンプから一軍に合流。オープン戦でも結果を残し、王貞治以来となる高卒ルーキー開幕スタメンの期待を抱かせた。結局、ルーキーイヤーはファームで体づくりに励むことになり、シーズン終盤に一軍で1打席だけ立ったのみに終わった。

 昨シーズンは一度も一軍に上がることはなかったが、イースタン・リーグで最多安打(98本)を記録。ファームでみっちり鍛えられた。

 飛躍の年として期待された3年目の今季、キャンプは一軍帯同だったが、オープン戦で結果を残せず開幕一軍は果たせなかった。それでもファームで結果を残し、4月中旬に一軍昇格を果たすと、持ち前の打棒を発揮して不動のレギュラーとなった。

「背の高い選手は手足も長いので、どうしてもバットコントロールが難しい。当然、インコースが窮屈になってくるのだが、彼はうまく腕をたたんで打っている。身長のわりに腕はそれほど長くないのかもしれない。しかも柔らかさがあるから、差し込まれても外野手の前に落ちる。それに外角の球に対しては、リーチがある分、擦ったような当たりでレフト前に落ちるヒットが打てる。

 よく指導者は、アウトコースはおっつけて流し、インコースは腰の回転で引っ張るなど、広角に打つことを推奨しているようだが、そんな器用なバッティングを若手ができるものか。それで頭が混乱し、バッティングを崩す若手がいることを知るべきだ。それよりも、落合(博満)のようにセンター返しを基本としたバッティングを教えればいいんだ」

【さらなる飛躍のために必要な名伯楽】

 そして広岡は、秋広に対してひとつだけ不安があるという。

「オールスター前までは、丁寧にセンター返しを基本としたバッティングで粘り強さもあったが、4試合連続ホームランを打ったあたりからいい球を簡単に見逃したり、悪球に手を出したり、雑になった感がある。そんな時にアドバイスをくれる指導者がいるかどうかだ。松井(秀喜)は長嶋(茂雄)との二人三脚で"1000日計画"と題して、ゲームが終わったあとも素振りを欠かさなかった。大打者の陰には必ず名コーチがつきっきりで教えるものだ」

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