鈴木誠也が明かした「どうせ打てない」不安 復調のカギは「完璧主義」ではなくなること (2ページ目)

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

【鈴木が感じていた焦りと不安】

 去年の春先を思い返すと、鈴木の現在の状況は少々信じがたいものがある。5年8500万ドルという好契約でカブス入りした日本のスーパースターは、メジャー1年目の開幕直後は絶好調。4月11日からの6試合では、打率.412、3本塁打と打ちまくり、ナ・リーグの週間MVPも受賞している。

「誠也の打撃は本当に素晴らしい。バットに当てた瞬間、ボールが飛び出していくような勢いのある打球を打っているね」

 当時、シカゴの地元メディアはそう報じていたように、春季キャンプ、シーズン開幕後に何度か取材をした筆者も同じような印象を抱いた。間違いなくメジャーでも通用するだけのツールを持っている。いきなりスター級の活躍ができるかはともかく、一定以上の貢献をすることは間違いないと思えた。

 ところが、以降の鈴木は左手の故障もあってなかなかペースが上がらず、結局は打率.262、14本塁打と合格点とは言えない成績に終わった。さらに、今春は筋力アップが話題になったが、今度は左脇腹痛でワールド・ベースボール・クラシックの出場を辞退。メジャー2年目の開幕にも間に合わず、4月中旬に復帰してからも全開とはいかなかった。

 5月こそ27試合で打率.319、5本塁打と好成績を残したものの、6月以降は低迷。スタメン落ちにまで至ったのはすでに記した通りである。

「このシーズンにかける思いが強く、最初にケガもあり、少なからず焦りはありました。うまくいかないことが続くとどうしても先が見えなくなり、『この先大丈夫かな』と不安になることもあった。『どうせ打てないんだろうな』といった不安な状態で打席に入ることが増えていた。そうなるとなかなか結果としてはいい方向にはいかないと思う」

 8月上旬、鈴木がニューヨークで残したそんな赤裸々な言葉は、思い通りにならない日々の中で精神的に苦しんできたことを物語る。なんとか結果を出したいという重圧が力みにつながり、悪循環になっていたのだろう。

 カブスのデビッド・ロス監督が発した次のような言葉は、背番号27が感じてきたことをわかりやすい形で代弁しているようだった。

「誠也はカブスだけでなく、母国を代表し、彼と家族のためにいいプレーがしたいという重荷を背負っている。自身に大きな期待を抱いている。長い期間、いい選手であり続けてきたから、自らに重圧を課してしまっているんだ」

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