ヤクルト山野太一が部屋に自分のユニフォームを2枚も飾る意味 石川雅規との練習で得たものは (3ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • photo by Sankei Visual

 小野寺力二軍投手コーチは、今年の山野について次のように語る。

「まずはストライクがとれるようになりました。新しいフォームにしたことで、腕をあげる位置やタイミングなどのバランスがよくなりました。そのことでリリースポイントが安定しましたよね。もともと曲がり球が得意で、いろいろな球種が使えるのですが、なおかつ奥行きを使う球種の練習もしていた。そうしたチャレンジが少しずつ結果になっていったので、もしかしたら(一軍で)というのはありました」

【再び支配下選手へ】

 7月14日、戸田球場。選手たちがアップを終えると、山野はチーム関係者に笑顔であいさつ回り。同級生で大の仲良しである梅野雄吾が「早く26を着ろよ」とはやしたてた。二軍では11試合に登板し2勝2敗、防御率1.75の成績だった。

 ロッカーへ戻る山野に「支配下登録されたのですか」と聞くと、「はい!」と弾んだ声が返ってきた。

 そうしてサブグラウンドで山野がキャッチボールを始めると、試合用のユニフォームに着替えていることに気がついたのだが、背番号は「013」のままだった。

「自分にとって育成時代は貴重な時間でしたし、このつらかった時期を噛みしめながらというか......最後にこのユニフォームで練習したい気持ちがあったんです」

 山野はその時の心境をしみじみと話した。

「家には初心を忘れないように『21』と『013』のユニフォームは、常に自分の目に見えるところにかけています。見るといろいろなことを思い出しますし、たくさんの時間を経てここまで来られたので、自分にとって『21』と『013』はすごく大事な番号です」

 山野はプロ初勝利の翌日に登録抹消。すぐに灼熱の戸田で次回登板に向けて調整を続けていた。あらためてプロ初勝利について聞くと、「やっとチームの一員になれたような気がしました」と言った。

 近くにいた育成左腕の下慎之介のほうを見て「いろいろな人と意見を共有しながらお互い高めあってきました」と話を続けた。

「今回は僕が支配下選手になって1勝できましたけど、これは自分の力だけでなく、ほかにも同級生や一緒に頑張って意見交換しあった方々の力もあっての1勝でした」

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