プロからも誘いがあった中尾孝義は、なぜ未知の社会人チーム・プリンスホテルへの入団を決めたのか (3ページ目)

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki
  • photo by Sankei Visual

「打席入って、1ボールからカーブがきて振ったら、本当にホームラン。そこからレギュラーです。1年生の時に3割8分ぐらい打ちましたよ、ホームラン2本で。運がよかったのか、そのあと、アジア大会の全日本メンバーに選ばれて。リーグ戦では4年の春に優勝してMVPになって、日米大学野球にも出られて。こういうのをエリートコースっていうんですかね(笑)」

 まさに「エリート」の通算成績は4年間で97試合に出場して353打数106安打(歴代7位)、打率.300、13本塁打、59打点。ベストナインに4度輝いている。当然、早くからプロへの意識も芽生えていたことだろう。

「いや、最初はプロに入れるとは思ってなくて、3年生の頃には親父から『プロなんか行かずに、地元の兵庫とか大阪の企業に入れ』って言われて、僕もそのつもりでした。ただ、先輩方がプロに入っていくなかで、この人が何位で指名されるんだ......とか思い始めて、じゃあオレも行けるのかなって。で、その頃、3年生の秋ぐらいに、プリンスから話があったんです」

【大学球界のスーパースターが集結】

 その日、専修大校友会のOB会長から「会わせたい人がいる」と声をかけられた。このOB会長には中尾が2年生の頃からよく食事に誘われていたが、OBといっても野球部ではなくバスケット部。北海道・旭川で仕事をしている人、ということしか知らなかった。

「OB会長に紹介されたのは、新宿プリンスホテル総支配人の幅敏宏さんという方と、部下の支配人の方でした。今でもはっきり覚えていますが、幅さんがまず『じつはプリンスホテルで社会人野球のチームを立ち上げて、再来年から加盟する。ぜひ中尾くんに入ってほしい』とおっしゃって、こう続けられました。

『プロよりも設備のいい専用グラウンドをつくる予定だし、今の大学野球のスーパースターを集めたいんだ』と。僕は聞いてすぐに『それはすごいですねえ。本当に夢があっていいと思います。もしできるのであれば、行かせてもらいます』と答えていました」

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