NPB通算97勝の久保康友はドイツにいた 「チームが『選手募集!』を貼り出してたんです。バイトのあれと一緒」 (5ページ目)

  • 鈴木智貴●取材・文・撮影 text & photo by Suzuki Toshiki

 みんなビジネス的にやっているし、野球選手でいることに価値があるから野球をやっているんであって、(心から野球を)好きでやっているのなんて、たぶんはじめのうちだけなんですよ。野球選手になったあとは"商品"として自分に価値がつくんで、それをどう保つか、どう生かすかっていうことが一番になるんですよ」

── 日本のプロ野球界にいた時の久保投手も、そうだったんですか?

「いや、僕は嫌いでした。ビジネス的になるのがすごい嫌でした。だから僕、そんなもんすぐ捨てて、こんなところに来ているんですよ。ここまで落として来るのは、自分の価値そのものをなくすみたいなもんですから。そもそも、そっちの価値観じゃないので」

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「野球は遊び感覚。観光で来ている」と公言する久保に、好奇の目を向ける者は少なくないだろう。しかし、誤解なきよう。マウンドに立って相手打者と対峙する彼の眼光は鋭く、厳しいプロの世界で激戦を潜り抜けてきた男のそれであったことも、忘れずに記しておきたい。

 続くインタビュー中編では、日本での現役中に抱いていた違和感、ドイツの野球環境、かつて在籍した米国やメキシコでの体験について語ってくれた。

◆久保康友・中編>>日本プロ野球界を嫌う理由「残りたいとかも思わないし、残る価値もない」


【profile】
久保康友(くぼ・やすとも)
1980年8月6日生まれ、奈良県橿原市出身。右投右打。大阪・関大一高3年時に選抜高校野球大会で準優勝。卒業後、社会人野球の松下電器で6年間プレーした後、千葉ロッテマリーンズに自由獲得枠で入団。2005年に新人王を獲得。2009年から2013年まで阪神タイガースに在籍し、オールスター選出やリリーフも経験した。2014年から横浜DeNAベイスターズで4季プレー。日本プロ野球13年間の現役生活で97勝86敗6セーブを記録。米国独立リーグやメキシコなど海外も渡り歩き、昨年は関西独立リーグの兵庫ブレイバーズに所属。今季はドイツのブンデスリーガ1部ハンブルク・スティーラーズで白球を追う。

プロフィール

  • 鈴木智貴

    鈴木智貴 (すずき・としき)

    1981年生まれ、静岡県出身。2010年からドイツ在住。DFB公認B級(UEFA−Bレベル)指導者ライセンス保有。これまでに左右アキレス腱断裂と左膝半月板損傷を経験しており、手術歴"だけ"はプロ選手並み。

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