楽天・藤平尚真は完全復活となるか 「高校ビッグ4」と称され入団も低迷、再飛躍へ岸孝之とのキャッチボールから得たこと (2ページ目)

  • 田口元義●文 text by Taguchi Genki
  • photo by Koike Yoshihiro

 そのひとつがピッチングフォームだった。ピッチャーにとって生命線とも言えるメカニズムを追求するあまり、収穫よりも課題のほうが気になり、マウンド上での役割が散漫となる。その結果、この年は一軍での登板は3試合のみで未勝利。そして、2020年の登板は1試合、21年にいたってはプロとなって初めて一軍で投げられずに終えた。

「何もできなかった」
「悔しい1年だった」

 シーズンを総括する契約更改でのコメントが、低迷する藤平の現在地を物語っていた。「心機一転」と背番号が46となり、中継ぎとして開幕した昨シーズンにしてもそうだ。先発に回った後半戦、磨いてきたチェンジアップを軸に4年ぶりの勝ち星を得たとはいえ、1勝という成績に納得できるわけがなかった。

【きっかけは岸孝之とのキャッチボール】

 そんな藤平が今年、かつてのような躍動感を取り戻し、良好なスタートをきれたのは、貫く覚悟と割りきる姿勢があるからだ。

 藤平には、「フォアボールが多い」という通年の課題がある。そこの克服に光明を見出したのが、今年の自主トレだった。

 きっかけはキャッチボールなのだという。

 2020年から自主トレをともにする、チームの先輩であり38歳のベテラン、岸孝之のボールを受ける。胸より低かったり、山なりだったり、そこに適度な強弱をつけるなど、多様な軌道であることに藤平は着目した。

「距離もずっと一定じゃなくて離れたり、縮めたりするんですけど、そういうことを繰り返していくなかで、違う質のボールを投げる感覚を体と指先で覚えられたんです。そういうところからキャンプに入って、フォームを固めていけたことがシーズンにもつながってるんじゃないかなって思います」

 多ければ1試合で120球以上を投げる先発ピッチャーにとって、ペース配分は大事なスキルのひとつである。バッターや状況に応じて、ボールの力加減を調節できる術を身につけることによってコンスタントに長いイニングを投げられるようになるし、必然的に質の高いゲームメイクにも結びついていく。

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