元楽天ドラ1長谷部康平の今 パン屋や野球塾にも挑戦「プロ野球と同じくらい刺激的な仕事に出会えるんじゃないか」 (3ページ目)

  • 田口元義●文・写真 text & photo by Taguchi Genki

【サラリーマンだけでは落ち着けない性分】

 さまざまな業種の仕事がしたいという渇望はやがて、長谷部に次のステージを意識させた。楽天の球団職員となって3年。ことわざで「石の上にも」と言われる期間だけに、自分でも新たな挑戦への頃合いと感じていた。

 ちょうどそんなタイミングで出会ったのがラ・パンである。オーナー企業としてフランチャイズ契約を結ぼうとしていた知人から、「一緒に仕事をしないか」と誘われ、承諾した。東京を中心に全国展開する専門店の、「東北初出店」という挑戦にも惹かれた。

 初めは仙台本店の店長として、楽天で培った営業スキルと元プロ野球選手のブランドも有効活用しながら広報活動に専念し、2020年8月のオープンにこぎつけた。

 同時に長谷部は、パン屋だけが仕事ではなくなっていった。

 ラ・パン仙台本店のオープンと時を同じくして、楽天のチームメイトだった枡田慎太郎らと仙台ポニーベースボールクラブを設立。小中学生をメインターゲットとした野球塾『バッティング・アスリート』の立ち上げ、運営にも携わるようになった。楽天とは今でもつながり、ラジオでの解説業や企業のイベントに参加したりもする。

 つまり彼の仕事とは、「長谷部康平」という人材を売るフリーランスに近い。

「サラリーマンだけでは落ち着けない性分なんだろうと思います(笑)」

 平日の昼間と休日は「パン屋の長谷部」としての稼働が多いというが、今では新たな試みにも注力できているという。

 それは、野球のすそ野を広げることだ。

 野球塾の活動のひとつとして、中学校の野球部で野球教室を始めた。近年は現場の責任者不足が問題となっていることから、その一助としてバッティング・アスリートに在籍する楽天OBの長谷部と金刃憲人、松井宏次がサポートに乗り出したのだという。

 高校生以上を対象としたラプソードを使った測定も、その一環である。簡単に解説すると動作解析。ピッチャーならボールの回転数や回転軸、リリース時の力の伝達率など。バッターならば、打球の速度や角度といった傾向を数値化、映像化したものである。昨年まで楽天の戦略室でラプソードを担当していた金刃がいることで、より強みを出せるのだと長谷部は言う。

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