阪神と巨人の指揮官を広岡達朗が徹底比較「岡田は策士だよ」「なぜ原はチームの顔を動かすのか」 (2ページ目)

  • 松永多佳倫●文 text by Matsunaga Takarin
  • photo by Sankei Visual

 そして話は、売り出し中の秋広優人に及んだ。

「期待の若手である秋広が出てきたが、3番に起用してバントをさせるなど、どういうつもりなのか。今は左ピッチャーでもスタメン起用を続けているが、最初の頃は左がきたらスタメンから外していた。原は"左対左"が不利というセオリーに惑われすぎ。若手の調子がいい時の勢いは、不利なものでもプラスに変える力がある。使い続けてこそ力になるということを知らないのか。

 その点、岡田は佐藤が大不振に陥っていた時も『きっかけさえつかめれば変わる』とコメントし、使い続けた。実際、今季初ホームランから佐藤は復調の糸口をつかんだわけだが、野村(克也)のようにメディアをうまく使ってのコメントだった。策士だよ、あいつは」

 それまでホームランゼロだった佐藤が1本打ったことで肩の荷が降りたのはもちろん、監督の言葉を受けて「これで変われる」と暗示にかかったのかもしれない。

【先を見据えた岡田采配】

 主軸を我慢して使うのは坂本勇人や丸佳浩も同じように見えるが、打順を変えたり、体調面を鑑みてだろうがスタメンを外したりと、原監督の起用には一貫性がない。首脳陣からの信頼を得て、選手たちはグラウンドに立っている。ベテランになればなるほど、去就を迫られるなかで1年1年が勝負となり、己との戦いがより研ぎ澄まされる。だからこそ、指揮官からの信頼が選手にとってなによりの糧となり、エネルギーとなるのだ。

「阪神の場合、投手力、走力に加えて平均点以上の守備力が備われば、自ずと結果は見えてくる。交流戦までに貯金17を数えるが、まったく浮かれた感じがない。岡田の『(2008年シーズンは)貯金23あっても勝てんかった』というコメントを聞いても、大逆転された苦い経験が教訓となっているから、まだまだ先を見据えているんだろう。とにかく落ち着いている。

 打順も固定化しつつあり、6、7番あたりは日替わりでチャンスを与え、その試合をしっかり任せる。ドラフト1位の森下翔太にしたって、開幕から起用して、打てなくなったら二軍に落とし、調子が戻ってきたら一軍に上げてしっかりチャンスを与える。選手も納得のいく起用だと思う。

 それとは正反対に、原は打順をコロコロ変え、1、2打席で結果が出なければすぐ落とす。これでは選手は育たない。岡田とは器の違いが見える。そんな原を推薦したのはオレなんだどけな。長嶋(茂雄)が勇退する時に、次の監督は誰にしたらいいかという相談を受け、原の名前を出した。野球人だった親父さん(原貢氏)が生きているうちはまだよかったけど、いまや誰も進言する人がいないんだろうな」

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