斎藤佑樹が振り返る13年前の投球メカニズム「左足の突っ張りは問題なかった。もっと胸椎を柔らかく使えていれば...」 (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Sankei Visual

 ただ突っ張り方にも特徴があって、踏み出した足のヒザが突っ張ったとしても、腕を振りきったあとに体重が前へいくだけの推進力があればいいんです。でも僕の場合は十分な体重移動ができないまま左ヒザを突っ張っていたので、地面からの跳ね返りを生かしきれていなかった。

 その際にちゃんと股関節が折りたたまれて重心が前へいくという、その動きができていればよかったんです。そのちょっとの重心の移動ができるかどうかで、これはよくない突っ張りだなとか、これはいい突っ張りだということは、当時から僕なりに感じていました。あの頃の僕に突っ張ってはいけないという意識はなく、突っ張ってもいいから前へいこうと考えていた記憶があります。

 体重がうまく前へ乗せられた時には、地面からのきれいな反発が生まれていました。股関節を折りたたんで重心をしっかりと前へ移動させる動きができた時は、左ヒザを突っ張らせることでブレーキをかけて止めることで、地面からの反発を生み出すこともできていたんです。だからそれなりのスピードも出た......。

【理想と現実のギャップ】

 でも実際は股関節をうまく折りたたむことができませんでした。それは大学3年の時に股関節を痛めたことと関係があったのかもしれません。痛みを逃がすために股関節をたたまないクセというか、そういう動きになってしまっていた気がします。

 大学生の時の僕には股関節を折りたたむという感覚があったんですが、でも、いま思えば、胸椎の硬さも影響していたのかなと思います。股関節をちゃんと折りたたもうとすれば、上体を前に倒すじゃないですか。そうするためにはどこかが反っていないとボールに力が込められなくなる。

 じゃあ、どこを反らせるかと言えば、胸椎を起こすことだと思うんです。股関節をたたんで、胸椎をキュッと起こしながら前へいく。そこで胸椎が起きてこないと上体が前へ倒れすぎて、極端な話、みんなワンバウンドになってしまいます。股関節をたためなければ高めへ抜ける、股関節をたためても胸椎を起こせなければワンバンになる。それが両方ともうまくいった時はいいボールがいっていた......当時はそういうメカニックで投げていたのかなと思っています。

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