ヤクルト奥川恭伸は「この1年間はつらいことばかりでした」 戸田球場に生きる悲哀と苦悩、そして希望 (3ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • photo by Sankei Visual

 そして後日、一軍に昇格した奥村に松井の言葉を伝えると、「僕がそういうふうになったのは、ここ数年だと思うんです」と言った。

「今年で10年目になりますが、若い頃は二軍に落ちると、もう一生が終わるんじゃないかというくらい落ち込んでいました。今はいろんなことを経験して、次のステップに進めました。次のステップというのは、また昇格できるかわからないけど、その可能性を信じてファームでアピールを続けるということです。いま(松井)聖が感じていることは、僕の言うワンステップ目だと思うので、それを乗り越えたら、次の感じ方になると思っています」

 奥村はここまでのキャリアを「一軍と二軍を行ったり来たりしていますね」と言った。今年は開幕一軍でスタートしたが、4月6日に登録抹消され、4月30日に一軍再昇格。初めて一軍の世界を知ったのはプロ3年目のことで、一軍へ上がる時の思いは毎年変わっているという。

「最初に一軍を経験した時は、本当に周りが見えていない感じでチームに突っ込んでいった状態でした(笑)。4年目から6年目は、なんとか個人の成績を残さないといけないという気持ちが強かったことを覚えています。7年目にヒザの大ケガをして1年間ファームだったのですが、簡単には(一軍に)戻れないという不安が強かったですね」

 大ケガを乗り越え、8年目は開幕一軍スタートをつかみとった。

「ただ、1カ月くらいで二軍に落ちてしまったんです。その時に、一軍で戦力になるために何をすればいいのかを考えるようになりました。ベンチでの声もそうですし、守備ではセカンド、ショート、サードをしっかり守ることができれば、一軍にくらいついていけるんじゃないかと。そのことに気づくのが遅かったのかどうかはわからないですけど、若い選手には早く感じてもらいたい。一軍でプレーして、活躍することが目指すべきところなので、それを信じて、自分が何をすべきかを考えることが大事だと思います」

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