巨人・門脇誠は高校1年夏から7年間フルイニング出場の鉄人 使えば結果を残す安定感でレギュラー奪取を狙う (2ページ目)

  • 安部昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Koike Yoshihiro

【長打力と器用性を兼備した打撃】

 守備の次はバッティングだ。フリーバッティングの最初の2本が、ライトポールのはるか上空を越えて見えなくなった。見せたがっているな......と思った。

「引っ張ったホームランなんか、プロは誰も信用しないよ」

 失礼を承知で、そんな声をかけてみた。

 怒るかなと思ったら、何も答えず、その次の打球からセンター、左中間、右中間にジャストミートのライナー性の打球が立て続けに飛んでいく。

「カシャーン! カシャーン!」とインパクトの打球音が心地いい。プロ野球選手の試合前のバッティング練習時の"あの音"だ。

「ホームラン性の打球、何本続けられる?」

 またしてもこちらの失礼な要望に、少しだけニヤッとすると、打球に角度をつけるスイング軌道に変えてきた。

「フンッ!」

 スイングのたびにうねりが聞こえて、打球が雄大な放物線を描いて外野ネットを越えていく。フリーバッティングとはいっても、人が投げるボールだ。こちらの注目にその都度応じて、打球方向や軌道を変えるなんて、なかなかできることじゃない。

【高校1年夏から7年間フルイニング出場】

「プロで活躍する、そこだけを目指して、中学ぐらいからやってきました。それがようやく現実になるか、ならないのか......ワクワク半分、不安半分です。体の強さや肩の強さ、足、長打力が、自分の長所だと思っているところはあるんですけど、技術的なことはまだまだ未熟なところばかりなので......」

 もの静かに、淡々と話す。

「高校1年夏の最初の試合から、大学の最後の試合まで全試合に出場してきたっていうことは、本人にとって、なによりの自信になっていると思いますし、私も親として、7年間休まずに中心選手としてプレーを続けてきた彼の体の強さはすごく誇りにしているんです」

 そう話すのは、父・寿光さんだ。寿光さんはスポーツ用具の製作と販売の仕事をされている。そんな父が開発した耐久性のある置きティーで、門脇もとことんバットを振り込んできた。

 門脇自身も父も長所に挙げた体の強さは、「心身の強さ」と言ってもいいだろう。

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