レジェンド審判員が厳選した先発・中継ぎ・抑えの名投手ベスト5 「何もかもが規格外」「消えるスライダーの使い手」などの15人 (3ページ目)

  • 水道博●文 text by Suido Hiroshi
  • photo by Sankei Visual

 1991年に新人王を受賞した森田幸一投手(元中日)も印象深いですね、173センチ、68キロと小柄な投手でしたが、ストレートに伸びがありました。中継ぎ、抑えとして活躍し、50試合の登板で10勝17セーブを挙げました。

 現役投手では、リバン・モイネロ投手(ソフトバンク)です。150キロを超えるストレートも威力十分ですが、大きくタテに割れるカーブは絶品。打者からすれば、顔の高さからストライクゾーンに落ちてくる感じだと思います。バットに当てるのも難しい、まさに"魔球"ですね。

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【消えた岩瀬仁紀のスライダー】

 クローザーは、通算セーブ数の多い5人を挙げさせていただきます。まず通算407セーブの岩瀬仁紀投手(元中日)と言えば、スライダーです。とくに右打者は、体の近いところまできて曲がるので、「とらえた」と思っても空振りかファウルにしかならない。私たち球審は捕手のミットに入るまで球が見えていますが、打者からしたら「消える」感覚かもしれませんね。

 日米通算381セーブの大魔神・佐々木主浩投手(元横浜ほか)と言えば、フォークボールです。佐々木投手の場合、ストライク、ボールの際どいところをジャッジするというより、ほとんどが空振りストライクなので、そういう意味で球審としてラクをさせていただきました(笑)。球種はストレートとフォークの2種類でしたが、打者はなかなか打てなかったですね。

 高津臣吾投手(元ヤクルトなど)の決め球は、サイドスローからのシンカー。球審としては、横の変化よりタテの変化のほうが判定しにくい。しかも高津投手のシンカーは、高めから落ちるのではなく、低めから落ちます。打者もストライクだと思って手を出すのですが、そこから沈むので凡打になってしまう。審判にとっても、打者にとっても厄介なボールでしたね。

 藤川球児投手は、"火の玉"の異名をとったストレート一本で三振を奪うことができました。打者はストレートがくるとわかっていても当たらない。物理的に浮き上がることはないのですが、藤川投手のストレートは本当にホップするような球筋でした。私個人としては、ストッパー時代よりもセ・リーグ記録(当時)となる46ホールドを挙げた2005年のストレートが一番速かったと思います。

 デニス・サファテ投手(ソフトバンクほか)は、2017年に日本記録となる54セーブをマークしましたが、この数字は別格ですね。ちなみに、セ・リーグ最多は岩瀬投手と藤川投手の46セーブです。スピードは160キロに迫る勢いで、193センチの長身から高いリリースポイントで投げ下ろすため、打者はなかなかミートできませんでした。サファテ投手は、広島、西武にも在籍しましたが、その時よりもソフトバンク時代はコントロールがよくなって相当グレードアップしていました。チームとしては安心して見ていられたのではないでしょうか。

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